北海道に暮らす8割世帯が加盟。「生活協同組合コープさっぽろ」の物流ネットワークと資本主義の先をいく考え方
トドック新川センターの中。配達担当者には若手が多い印象。
トドックでは、2週間前にあらかじめ注文された品を各家に届ける。コープに入って13年目という、センター長の村野洸太さんはこんな話を聞かせてくれた。 「毎週決まったお宅へまわるので、届け先の方々とも顔見知りになります。お互いに名前も覚えるし世間話をしたり。『今日はいつもより遅かったから心配したよ』とか『今週もありがとうね』と言ってもらうと、ほかの配達業者さんとは関係性が少し違うのではないかなと感じます」 届ける先には年配者も多く、若手のドライバーは、子どもや孫くらいの世代にあたる。村野さん自身、ある届け先の方にお見合いの話を本気で勧められて困ったことがあると笑っていた。
この配達が見守りも兼ねていて、何かあった際には公的に連絡を取ることができるよう、各自治体とコープさっぽろの間で「高齢者見守り協定」を結んでいる。 一方で、彼らは単なる配達担当者ではなく、営業パーソンとしての顔をもつ。 「むしろ営業としての意識の方が強いかもしれません。ノルマではないですが、『今週はこの商品をどれぐらい売ろう』という販売促進の商品が毎週決まっていて、目標に達成したらインセンティブがもらえる仕組みがあります。足りないからといって給料が減ることはないのですが。他の店で売っている商品も、僕らがお勧めすると『あなたが言うんだったら買ってみようか』と言ってくださる方が多い。逆にトドックの配達担当者みんなが本気を出すと、バイヤーの用意した数のはるか上を売って欠品しちゃうことがあるのでそちらの方が気になりますね」 トドックの配達員が本気を出して売ったら品が足りなくなるというのだから、すごい。朝9時頃から一日約70軒をまわるため、一軒あたりにかけられる時間は5~6分。それでも、信頼関係の上に成り立つ販売力があるのだと思った。
屋内では、朝から配達担当者が組合員に届ける商品を積み込んでいる。
【関連記事】
- 55名でつくるシェア型本屋「城南書店街」で日常から一歩踏み出す体験を。建築家に便利屋、うどん屋、郵便局員など職業も多彩 香川県丸亀市
- “地元で何かしたい人”が大勢いないと、生活圏内は面白くならない。だから僕はこの場所をつくった。徳島県脇町の「うだつ上がる」
- 地元企業の共同出資で生まれた絶景の宿「URASHIMA VILLAGE」。地域の企業が暮らしのインフラを支える時代が始まっている 香川県三豊市
- 地方でのデザイナーのプレゼンス、存在価値を高めたい。「場」をもって示す、佐賀発のデザインユニット「対対/tuii」の挑戦
- コンビニが撤退危機だった人口減の町に、8年で25の店がオープン。「通るだけのまち」を「行きたいまち」に変えたものとは? 長崎県東彼杵町