北海道に暮らす8割世帯が加盟。「生活協同組合コープさっぽろ」の物流ネットワークと資本主義の先をいく考え方
コープさっぽろが地域貢献できる理由
北海道に限らず、人口が減る地域ではいま民間事業がどんどん撤退し、行政の財政状況も厳しい。これまで当たり前にあった生活インフラやサービスが維持できなくなる地域もある。 それなのにコープさっぽろが、民間事業者や行政に代わり、(率直にいえば)儲からない、地域の人々を支えるサービスを実現できるのはなぜなのだろう? 一つには、まずコープさっぽろが、イオンなどの大資本の企業と競争し続ける、利益追求型の厳しい事業体であることがある。小売と宅配に加えて、道内を網羅する物流ネットワークを擁し、いまや他社の荷物の配送も請け負う物流会社の顔をもつ。宅配事業では、ドライバーがしっかり商品を売っていく営業パーソンも兼ねている。
二つ目に、一般的な株式会社と違い、出た利益を組合員の生活を向上させるために還元できる組織である点。そのために多角的な事業を組み合わせて採算を合わせる。株主の儲けを最大化するのではなく、事業性が低い取り組みであっても組合員に求められれば赤字が出ない範囲で実現する。 「たとえば」と広報の森ゆかりさんは教えてくれた。 「市町村の給食センターは、その市町村にある学校の生徒数分の給食しかつくることができないため、児童数が少ないと採算が合いません。でもうちの関連会社の食品工場なら店舗で販売する惣菜や食品加工、夕食宅配サービスの調理も兼ねられ、ほかの事業と抱き合わせで採算を合わせられます」 三つ目に、コープには住民からの厚い信頼と期待の歴史があること。店舗は、これまで主婦を中心とする熱心な「消費者運動」の拠点として活用されてきた。「組合員さんはほかの店とは違う思いを生協に対してもっている」と大見理事長は話していた。 利益を得る事業と、得た利益を地域や組合員に還元する。その両輪をしっかりと大きな規模でまわしている。
配達担当者は営業パーソン。信頼関係の上にある販売力
朝9時。宅配拠点の一つ、トドックの新川センターでは朝礼を終えた配達担当者たちがどっと事務所から出てきた。若い人が多くて驚く。ほとんどが総合職の職員だ。
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