北海道に暮らす8割世帯が加盟。「生活協同組合コープさっぽろ」の物流ネットワークと資本主義の先をいく考え方
北海道に暮らす8割以上の世帯が加盟している組織。そう聞くだけで驚くべき数字だが、「コープさっぽろ」がどれほど北海道の人たちの生活を支えているかを知れば、誰もが納得するだろう。店舗事業に加えて移動販売に宅配サービス、高齢者向けの配食、子育て支援、学校給食まで提供している。高度な物流センターを自前でもち、「利尻や礼文島の“ぽつんと一軒家”までとりこぼさない」流通網を擁する。取り組みの現場を見せてもらい、大見英明理事長に話を聞いてきた。
コープさっぽろとは?
「社会の課題を解決する」という言い方には、どこか自分ごとから遠い、別の世界の話をしているようなニュアンスがある。でも「社会」とは、よく考えれば私たち一人ひとりの暮らしが集まってできている。一人で解決できない困りごとは他者と協力し合わなければ解決しないし、ルールやしくみも変えられない。そのとき他人同士が力を合わせる一つの形が「協同組合」なのではないか。そう思わせてくれる、お手本とでもいうべき組織があった。「生活協同組合コープさっぽろ」だ。 改めておさらいすれば、生活協同組合とは消費者の出資によりできた組織で、「暮らしをより良く豊かにしたい人たちが自らの意思で加入し、願いを実現するために作り上げた協同の組織」。共同購入や個人宅配、お店、共済、サービスなどの事業は、組合員の利用により支えられている。 全国には多くの生協組織があるが、コープさっぽろほど、住民に支持され、事業を拡大して、そのぶん地域貢献できている組織はないのではないだろうか。
事業の二大柱は、小売業と宅配業。2023年の数字では、店舗事業高は約2000億円、宅配事業で約1100億円。道内に109の店舗をもち、宅配事業「トドック」のセンターは51カ所整備され、北海道全土にわたって、ラストワンマイルを1時間前後で届けられる宅配網が整っている。その宅配センターには子育て支援のコミュニティスペースが併設されている。 加えて、もはや一組織の営利活動にとどまらない、地域支援活動を幅広く行っている。宅配サービスそのものが高齢者の見守りを兼ねており、道内ほぼすべての自治体と「高齢者見守り協定」を締結済み(全道179市町村のうち残すところ3自治体)。そのほか移動販売「おまかせ便カケル」、高齢者向けの夕食宅配サービス、学校給食を自治体に代わり提供するスクールランチ、子育て支援、エコセンターでのリサイクル、海や川の清掃活動……など多岐にわたる。 すべての自治体との協定が実現すれば、行政に代わりさらなる住民サービスの向上など、北海道一体で取り組める可能性がある。今年から、コープさっぽろで医療関係者を雇用し、地域の組合員向けの健康診断を行う事業も着手されている。
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