聖陵「夏は勝つ」 /愛媛
<センバツ2019> 第91回選抜高校野球大会第5日の27日、松山聖陵は初戦となる1回戦で大分(大分)と対戦し、1-4で敗れた。悲願の甲子園初勝利はかなわず、夏に持ち越された。一回立ち上がりを攻められ、2点を追う展開となったが六回まで毎回出塁。八回に岸田明翔捕手(2年)が適時打で一矢報いたが、あと一本が出なかった。初戦敗退となったがナインの健闘に、アルプススタンドからは「よくやった」と温かい拍手が送られた。【遠藤龍、宗岡敬介】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 松山聖陵 000000010=1 20000002×=4 大分 約1900人が応援に駆けつけ、一塁側アルプススタンドを青く染めた。先発のマウンドには二枚看板の2年生右腕、平安山(へんざん)陽投手が立った。130キロ台の安定した投球だったが、一回裏に先頭打者に中前にうまく運ばれると、そのまま相手打線に捕まり、2点先取された。 二回、大村侑希選手(3年)の二塁打でスタンドは一気に盛り上がりを見せた。大村選手の父弘昭さん(44)は「この一本でチームにも勢いがつけば」とグラウンドを見つめた。 三回からマウンドを引き継いだ高松亨有投手(2年)は四回裏、テンポの良さやカーブを武器に3者凡退で相手打線を封じた。五回裏1死二、三塁のピンチでも持ち前の冷静さで無失点で切り抜け、高松投手の父利行さん(52)は「よっしゃー」とガッツポーズ。「ハラハラしたが落ち着いて投げきってくれた」 六回まで毎回走者は出すものの得意の集中打が出ず、試合は両チームともゼロを重ねる展開に。 試合が再び動いたのは八回。スタンドでは生徒らが肩を組み大会入場行進曲「世界に一つだけの花」を大合唱。応援に応えるように「自分が出ないとチームに勢いが出ない」と折田玲選手(3年)が中前打を放つと、4番大村選手が左前打で続いた。「まずは一点取って同点に追いつきたい」と岸田捕手が左前に打球を運び、スコアボードに「1」が刻まれると、スタンドは抱き合ったりして歓喜に包まれた。「ここから」と期待が高まったが後が続かず、ゲームセット。「夏に必ず戻ってくる」。雪辱を誓うナインらに惜しみない拍手が送られた。 ◇「兄越え」へ帰還誓う 大村侑希選手(3年) 二回、低めのスライダーをたたき、三塁線を抜く二塁打でチームを勢いづけた。「Hランプをつけてこい」。センバツ出場が決まった日の夜、兄弘稀さん(20)から受けた激励に応えた。 兄の影響を受け小学2年で地元のソフトボールチームに入って以来、ずっと兄を追いかけて野球の道を進んできた。松山聖陵が甲子園に初出場した2016年夏、兄は選手としてグラウンドに立った。アルプススタンドで「自分も甲子園に行きたい」と強く思った。 兄と同じ舞台に立ち、目指すは「兄貴を超える」こと。その文字を帽子のつばに書き入れ試合に臨んだ。冬の間に成長した打撃力を買われ、公式戦初の4番を任された。甲子園入りしてからも緊張状態が続いたが「思い切り楽しんで」との兄のアドバイスを思い起こして打席に入った。 2点を追いかける八回、安打で走者を進塁させ反撃の好機を作った。3打数2安打と兄の成績は上回ったが、初戦敗退は同じ。「甲子園初勝利という約束を果たせていない。夏に必ず戻ってくる」と帽子を強く握り、夏の大会での「兄越え」を誓った。【遠藤龍】 ◇いつか僕たちも ○…一塁側アルプススタンドには、岸田明翔捕手(2年)や川口端午選手(同)、秀平琉晟選手(3年)が中学時代に所属した高槻ボーイズ(大阪府)の選手や保護者ら約50人が応援に駆けつけた=写真。八回に岸田選手が反撃の左前適時打を放つと、昨年の松山聖陵マネジャーだった田辺飛雄馬さんの弟で、高槻主将の慎之介さん(14)は先輩の活躍に「かっこいい。いつか自分も甲子園に立ちたい」と目を輝かせていた。 ◇母へ贈る雄姿 ○…渡部龍弥選手(3年)の母紀恵さんは、この日が49歳の誕生日。渡部選手は「いつも早起きして弁当を作るなど支えてくれている」と感謝する。同校入学時に母を甲子園に連れて行くと宣言した通り、二塁手で先発メンバー入りし、内野ゴロを華麗にさばくなど堂々とプレーした。紀恵さんは「スタメンで出場できると思っていなかったのでうれしい。甲子園に連れてきてもらえたことがもうプレゼントです」と晴れ姿を見つめた。