「今は新入生が10人入ったらびっくり」…甲子園12度出場の強豪高校も直面する「野球部員減の荒波」
3月20日に韓国・ソウルで、大谷翔平が所属するドジャースが開幕戦を迎えた。チケットは争奪戦となり、日本のテレビでも連日その模様が放送され、注目度の高さを感じさせた。 【独占入手!】すごい…!大谷の妻・真美子さん「コートを離れたプライベート写真」入手! また、健大高崎の優勝で幕を閉じた春のセンバツ高校野球も、当初は悪天候や季節外れの冷え込みの影響で客足が鈍かったが、日曜日に開催された決勝は、地元の人気校である報徳学園の存在もあり、3万4200人と、まずまずの客入りを見せた。 こういった現状を見ると、まだまだ日本国内において、「野球」というスポーツの影響力、存在の大きさを実感させられる。だが、こと競技人口に関しては、非常に厳しい現状がある。 例えば、1、2年生の2学年で戦う秋の公式戦では、多くの部員を抱える強豪校を除く多くのチームでは、ベンチ入り人数の上限に満たないこともめずらしくない。そして、この選手数減の苦境は、かつての強豪とて無関係ではない。 「今は春の新入生が10人も入ってきたら、もうびっくりするんじゃないですか」 こう語るのは、教員や事務職員ではなく、一般企業に勤務しながら母校である山口県立岩国高校を率いて30年超になる、河口雅雄(60)だ。 岩国は山口県下で有数の進学校でありながら、春7、夏5度の甲子園出場を誇る名門。直近では、’14年に春夏連続出場を果たしている。 それから10年。山口を代表する名門県立校も、地方を中心に加速する少子化、それに伴う部員数減の荒波に揉まれている。2人の途中退部があったとはいえ、‘23年夏のチームの3年生はわずか1人だった。 「2年の冬に2人が辞めて、1人は『勉強に集中したいから』という理由。もう1人は、’22年の秋が終わった時点で人数が9人を下回って、『来年1年生たちが入ってくるかわからない状況で、モチベーションが保てない』と。2人抜けて、‘23年の4月に1年生が入ってくるまでは、6人でやっていましたね」と河口。 甲子園にコンスタントに出場していた時代も「3学年で60人いたことは、ほとんどなくて、甲子園に出たときもしょっちゅう出場校の中で最低部員数だった」と言うが、にわかに信じがたい数字である。 「10年ひと昔」という言い回しはあるものの、たった10年前に春夏連続で甲子園に立ったチームが、部員確保に四苦八苦する現実がある。また、そこには「子どもの数に対して、学校数が多い」現実もあると語る。 「今、岩国市内には、うちを含めて6校があります。そのうち2校は今連合チームなので、チーム数で言えば5。例えば、市内に野球をやっている中学生が50人いたとして、それぞれに進むと1校に10人。でも、全員が全員高校で野球をするわけではないので、もっと減りますよね」 さらに進学校ゆえの選手確保の難しさもある。 「今は(入学希望者が募集定員を下回る)“定員割れ”をすることもありますが、岩国高校の場合落ちます。『入って大変だから』だと思うんですけど。今から2年前かな、『僕は岩国高校に入って絶対野球やりたいです!』と『僕は絶対やりません』という2人の中学生がいて、絶対やらない子が通って、絶対やりたかった子が落ちたっていう(苦笑)。そういうこともありました。その子は定員割れで別の公立校に二次募集で入りました。年によっても違いますけど、ある程度成績がないとだめなんですね」 また、その土地柄で根強くはびこる考え方もマイナスに作用しているという。 「山口に限らず、田舎と言われるところは全部そうだと思うんですけど、『公立に落ちて私学に行く』のを、結構後ろめたく感じられる家庭が少なくない。私学が悪いわけでは全然ないし、都会であれば私学の進学クラスに入るのも普通だと思うんですけど。岩国を受けて落ちたらいけないから、受験の段階で、他の公立に切り替えるケースも多いです」