「今は新入生が10人入ったらびっくり」…甲子園12度出場の強豪高校も直面する「野球部員減の荒波」
’15年には自費で寮を建設。あくまで生活圏も同じ地区ではあるが、隣県の広島からも選手を受け入れ、チームを作り上げている。「まだローンがあるから、やめねえよ」とうそぶきつつ、河口が続ける。 「僕が監督になったとき、岩国高校は20年甲子園に出てなかったんです。でも、OBからしたら半世紀ぐらい出ていないような感覚だった。今、最後の出場から10年ですけど、同じようにかなり時間が経った気がしています。 ずっと、『岩国高校野球部の歴史に新たな1ページを刻みたい』という思いの繰り返しで監督をやってきて、また甲子園に出て、新しい歴史を作りたいと思います。現実問題、戦力は厳しい。120キロそこそこしか出ない投手しかいない年もある。でも、僕は長年選手たちに『環境を言い訳にするな』と言って来てるんです。なら、監督の自分が選手層を言い訳にすることなんてしたくないし、最初から負けると思って試合に臨んだって、得られるものなんかない。それに、プロや社会人と違って、まだ何とかそれでも勝負できる道が探せるのが高校野球だと思うんでね」 昨夏は2回戦で、センバツ出場の光を撃破。待球策を駆使して、直球の最速が140キロを超える注目投手を攻略した、わざありの勝利だった。久々に県8強まで食い込み、準々決勝では、宇部鴻城にサヨナラ負けしたが、後の甲子園出場校相手に9回までリードを奪い、土俵際まで追い詰めた。 河口は「夏の戦いを見て、岩国でもチャンスがあると思ってくれた中学生も多い」と実感を込める。 部員不足の苦難を乗り越え、再び甲子園に返り咲いたら――。それは間違いなく、野球部史に残る復活劇になる。 取材・文・写真:井上幸太 1991年、島根県生まれ。大学卒業後、出版業とは無関係の会社員生活を約2年半送った後、’17年10月からライターとして活動を開始。現在は、居住地である島根県の高校野球を中心とした中国地方のアマチュア野球を中心に取材。著書に『貫道 甲子園優勝を目指す下関国際高校野球部・坂原秀尚監督とナインの奮闘』、構成担当に『アフリカから世界へ、そして甲子園へ 規格外の高校野球監督が目指す、世界普及への歩み』(いずれも東京ニュース通信社)がある
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