【アルピナ物語】伝説のBMWチューナーの遺産 BMW 5シリーズをアイコンモデルに変えたアルピナB7とB10とは?
その後、完全に再設計された「E34」世代で大きな飛躍を遂げた。より硬く、より重く、より大きくなった「B7」は、ドライビング性能の向上と、より調和のとれたレスポンス特性を得るために、より大きなパワーを必要とした。しかし、ブースト圧を調整するロータリーノブや、初めて採用されたトラクションコントロールをオフにするボタンなど、長年にわたって親しまれてきた機能の一部はそのまま受け継がれた。
愛情を込めて装飾されたスポーツシートに腰を下ろすと、すぐにくつろいだ気分になる。レザーはまだ新車のような香りがし、ドライバー側に傾いたダッシュボードは完璧だ。アルピナは私たちのために、最も神聖なミュージアムピースを眠りから覚ましたのだ。私たちが試乗した「B10 ビトゥルボ」は、生産番号507を持つ、このタイプの最後のモデルである。
感傷的なドライブ
イグニッションキーを回すと、3.4リッター直6が深いうなり声とともに息を吹き返す。木製のギアシフトノブに目をやると、一瞬立ち止まる。ギアバッグの左側にある小さな銀色のコブに見覚えがある。90年代半ばにプジョーが306に取り付けたのと同じタイプのセンサーロッドイモビライザーだ。どうしてそんなことがわかるのかって?1996年式の「306 1.6i」は、私が18歳のときに初めて買ったクルマだった。そんなロック解除バーをズボンのポケットに何年も入れていた。
感傷に浸るのはもう十分だ。クラッチを踏み、ギアシフトノブを左にシフトする。一瞬の抵抗の後、1速が入る。その通り、筆者が8歳の頃、父親の5シリーズのギアスティックは多かれ少なかれそんな感触で、シフトチェンジに夢中になっていた。それは32年経った今も変わっていない。
撮影場所へのドライブでは、その実力を発揮する前に、慎重にドライブし、すべてを作動温度まで上げることが我々のモットーだ。控えめに言っても、その加速はまさにクレイジーだ。現行モデルの方が速いというわけではないが、「B10(E34)」ではすべてがより原始的で、より機械的で、あるいはもっと男性的に感じられる。