キスや性行為で感染するヘルペスウイルスが「頭頸部がん」リスクに ベルリン医科大学
HSV(単純ヘルペスウイルス)とは?
編集部: 今回の研究の対象となったHSVについて教えてください。 上先生: HSVは痛みを伴う水疱や潰瘍を引き起こす一般的な感染症で、主に皮膚と皮膚の接触によって広がり、治療は可能ですが治癒はしません。HSVには口唇ヘルペスの主な原因であるタイプ1(HSV-1)と、性器ヘルペスの主な原因であるタイプ2(HSV-2)の2つのタイプがあります。タイプ1は主に口腔接触で広がり、HSV-2は主に性的接触で広がります。 2016年のデータによると、世界で50歳未満の人口の67%にあたる約37億人がタイプ1に感染しており、15~49歳の13%にあたる約4億9100万人がタイプ2に感染しています。男性よりも女性の方がタイプ2に感染しやすく、思春期の若者で新規感染が多くみられます。 HSVには、抗ウイルス薬(アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル)が用いられます。症状の期間を短縮して重症度を軽減しますが、感染を治癒することはできません。痛みの緩和には、パラセタモールやイブプロフェンなどの鎮痛薬が有効です。 感染予防について、症状がある間は口腔接触や性的接触を避けることが重要です。コンドームの使用も有効ですが、完全な防止にはなりません。日常的に予防するためには、「HSVについての話をパートナーにすること」や「共有物を避けること」が推奨されます。HSV感染のリスクがある妊娠中の女性は、医療提供者に相談することが重要です。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: ドイツのベルリン医科大学らの研究グループによる発表への受け止めを教えてください。 上先生: 大規模な臨床研究で価値あるものです。HSV感染と頭頸部がん、特に口唇がんとの関係を示した点で高く評価できます。HSV感染は抗ウイルス剤で抑制可能です。今後、このような治療薬投与との関連が研究されるでしょう。将来的には、がん予防の観点からもワクチンの開発が必要であると考えます。