スバルが「本格ハイブリッド」に本気! 他メーカーには真似できない“独自システム”新開発! 最新「S:HEV」一体何がスゴいのか?
スバルが独自開発した「e-BOXER S:HEV」とは?
2024年12月5日、スバル「クロストレック」に「e-BOXER S:HEV(ストロングハイブリッド)」が追加されました。 同車に搭載されるこの次世代ハイブリッドシステムは、今後のスバル電動化の重要な鍵となり、今後様々なモデルに水平展開される予定となっています。 【画像】カッコいい! これがスバル初の「本格ハイブリッド車」です! 画像を見る(30枚以上)
その概要を簡単に説明すると、水平対向4気筒エンジンに発電用/駆動用のモーターとリチウムバッテリーを組み合わせた「シリーズ・パラレル式ハイブリッド」です。 機構的には資本提携先のトヨタのハイブリッドシステム(THS II)を活用しながら、スバル車の構造に合わせてハード/ソフトともにスバル独自で設計されました。 筆者(山本シンヤ)はクローズドコースで行なわれた事前試乗会に加えて、リアルワールドでも試乗済みですが、ストロングの名の通り力強い走りと燃費の両立に加えて、「スムーズ(Smooth)」「静か(Silent)」「意のまま(Synchronize)」など、多くの「S」を実感しています。 このシステムはTHS IIを活用していることから、「トヨタから提供を受けたシステムをポン付けした」と思う人もいるようですが、簡単に言うと、発電用/駆動用のモーターとその仕組み(トヨタは2019年4月にハイブリッドの特許を無償で提供している)を活用しただけで、そのほかは全てスバルの独自開発したもの。要するにトヨタは“システムサプライヤー”として取引を行なっているわけです。 スバル車は、水平対向エンジンを縦置きにレイアウトしている上に、プロペラシャフト付きのメカニカルAWDシステムがデフォルトで、S:HEVだからといって“特別扱い”はしません。 その結果、S:HEV用のトランスアクスルは発電用モーター→ギア→駆動用モーターに加えて、下側にはフロントに駆動を伝えるデフ、駆動用モーター後方にはリアに駆動を伝えるカップリングが置かれました。 このマシマシのシステムを従来のトランスアクスルとほぼ同じサイズに収めるためには、独自開発じゃないとできないというわけです。 今回このS:HEVと組み合わされるAWDシステムは新たに開発されたメカニカルAWDです。 前60:後40のトルク配分を基本に、走行状態に合わせてリアルタイムにトルク配分をコントロールする考えはACT-4(アクティブトルクスプリットAWD)と同じですが、それをコントロールする多板クラッチが油圧式から電磁式に変更されています。 この辺りを開発者に聞くと、「ACT-4はトランスミッション(CVT)の油圧を活用できたので油圧式でしたが、S:HEVは電気CVT。AWDのために油圧経路を引くのは合理的ではないので、今回は電磁式を採用しました。ちなみに電磁式の知見は『WRX STI』のDCCD(ドライバーズコントロールデフ)であったので……」とコメントしています。 これまでスバルのAWDシステムは「常時四駆」が基本でしたが、S:HEVのAWDシステムは「低負荷の定常走行」かつ「ステアリングが直進状態」の時のみFF駆動になります(スバルは積極的にアナウンスしていませんが)。 これは燃費の面でメリットがあり、応答性の高い高出力モーターと電磁式クラッチの合わせ技を可能にしています。 そんなS:HEVのトランスアクスルを組み立てている工場が、埼玉県北本市にある「スバル群馬製作所・北本工場」です。そして今回、その工場を特別に見学することができました。