紅白、FNS歌謡祭、レコ大、MステSP…「今年は数字が獲れないかも」年末の音楽特番が”不安視される理由”
残り1ヵ月はテレビの音楽フェス期間
STARTOとK-POPだけでなく、若手のボーイズグループとガールズグループも起用することで、「レギュラー番組を長時間化しただけの特番とみなされてしまう」のが難しいところ。さらに「一年を締めくくる年末の音楽特番だからこそ、幅広い年代の実力派アーティストを見たい」という本来の視聴者感情から離れていく。かといって、STARTOとK-POPのアーティスト数を減らすのは視聴率とネット反響の両面で不安があり、制作サイドには繊細なバランス感覚が要求されている。 その一方で出演者のかぶりについては、もはや「あまり気にしていない」と言っていいのではないか。ネットの普及で一人ひとりの「好きなアーティスト」が細分化される中、「そんなことを言ったら視聴率なんて取れない」がテレビマンたちの本音であり、「選曲と演出で違いを見せよう」という姿勢が見て取れる。 世代を超えた“今年を代表する曲”がほぼ消滅したことも、そんなテレビマンの割り切りを加速。「今年このアーティストはこの曲を披露してもらうべき」という縛りのようなものがなくなり、「他の音楽特番とは異なる楽曲で変化をつければOK」という状況に変わった。 各音楽特番で独自色を感じる出演者は最小限に留められ、ライト層を引きつけるような目玉のアーティストや企画も今のところ見当たらない。 業界内ですら「似たような音楽特番ばかりになりそう」という見方があるだけに、これは裏を返せば「アーティストの底力に懸けるしかない」ということではないか。つまり彼らが各音楽特番で一期一会のようなライブ感あふれるパフォーマンスを見せることが重要であり、制作サイドはそのムード作りが求められるだろう。 これだけ年末の音楽特番が多く、なお増えていることから、今年の残り1ヵ月間は「テレビの大型音楽フェス期間」と言っていいのかもしれない。世間の人々に「残り1ヵ月間はテレビで音楽フェスを楽しむ時期」とみなしてもらい、制作サイドが一年の感謝を届けるような放送ができれば、テレビ業界としてはそれなりの成果を収められるのではないか。
木村 隆志(コラムニスト/コンサルタント)