北の富士勝昭さん

　2024年は、野球界をはじめとする他のスポーツ界からも多くの訃報が届いた。振り返ってみる。 【横綱で10度優勝　北の富士勝昭さん】 　大相撲の第52代横綱として優勝10回を誇った北の富士勝昭さんは、同時に横綱昇進したライバル玉の海と「北玉時代」を築いた。引退後は千代の富士、北勝海を育たが、98年に退職。晩年はNHK大相撲中継の解説者としてユニークかつ歯に衣（きぬ）着せぬ発言が高い支持を得た。現役時代は「プレーボーイ横綱」「夜の帝王」と呼ばれ、放送席では和服をさりげなく着こなす。戒名には故人を象徴する「粋」の文字が入った。 【「日の丸飛行隊」笠谷幸生さん】 　72年札幌五輪で歴史を刻んだスキー・ジャンプ70メートル級（現ノーマルヒル）の表彰台独占。「日の丸飛行隊」の中心にいたのは日本人初の冬季五輪金メダリストとなった笠谷幸生さんだった。欧州伝統のジャンプ週間で3連勝しながら、国内の代表選考会のために最終戦を棄権。「特別扱いされたくない」は実直な人柄を物語る。引退後も日本のジャンパーを見守り98年長野五輪の団体戦初制覇は飛型審判員として見届けた。5月、お別れの会が行われた大倉山ジャンプ競技場から、空へと旅立った。 【虎マスクの戦友　小林邦昭さん】 　小林邦昭さんは初代タイガーマスク、佐山サトルとの数々の激闘から「虎ハンター」の異名を取った。マスクを剥ぐ“無法殺法”などでヒール役に徹し、大暴れ。その後、長州力らと維新軍団を結成し、各団体で存在感を示した。引退後は、新日本で裏方として道場の管理人などを務め、若手を育成指導。度重なるがんとも闘った。リングを下りると穏やかな人柄で知られ、亡くなる直前に電話で話した佐山は「青春を共有した戦友。最高のライバル」だったとしのんだ。 【ドイツの「皇帝」フランツ・ベッケンバウアーさん】 　サッカー選手、監督として西ドイツ代表（当時）をそれぞれW杯優勝に導いたフランツ・ベッケンバウアーさんは、優雅なプレーと統率力で「皇帝」と呼ばれた。郵便局員の息子に生まれ、保険外交員になるために学習したが、18歳でBミュンヘンと契約して人生が一変。欧州チャンピオンズ杯（現欧州CL）を3連覇、バロンドール（当時欧州最優秀選手）にも2度輝き、78歳まで生きた生涯を「完璧だった」と振り返っていたという。 【漫画ゴルファー　坂田信弘さん】 　坂田信弘さんは異色のプロゴルファーだった。京大中退後、ゴルフ場の研修生を経て27歳でプロテストに合格。シード権獲得には遠く及ばなかったが、小学館の雑誌で長期連載された「風の大地」など、スポーツ漫画の原作者として一躍売れっ子に。印税などの収入を基に、ジュニア育成の坂田塾を開いた。後に賞金女王となった古閑美保、上田桃子ら数々のトップ選手が巣立った。教え子の安田祐香は今年、念願のツアー初優勝を遂げた際、「天国で見てもらえているかな…」と話し涙を流した。 ≪主な訃報≫ 　▼1月7日フランツ・ベッケンバウアー（享年78　サッカー元西ドイツ代表、元西ドイツ代表監督） 　▼同13日田中　英寿（享年77　日大元理事長、日大相撲部元監督） 　▼同31日山根　明（享年84　日本ボクシング連盟元会長）肺がん 　▼2月11日ケルビン・キプタム（享年24　男子マラソン世界記録保持者） 　▼3月18日篠塚建次郎（享年75　ラリードライバー）膵臓（すいぞう）がん 　▼4月6日曙（享年54　大相撲元横綱＝本名曙太郎、旧名チャド・ローウェン）心不全 　▼同10日O・J・シンプソン（享年76　元NFL選手）がん 　▼同23日笠谷　幸生（享年80　72年札幌五輪スキー・ジャンプ金メダリスト）虚血性心疾患 　▼5月大潮（享年76　大相撲元小結＝本名波多野兼二） 　▼7月22日坂田　信弘（享年76　プロゴルファー） 　▼8月28日千代天山（享年48　大相撲元小結＝本名角大八郎） 　▼9月荒木田　裕子（享年70　76年モントリオール五輪バレーボール女子金メダリスト、21年東京五輪組織委員会副会長） 　▼同1日塚原（旧姓・小田）千恵子（享年77　68年メキシコ五輪体操女子代表、指導者） 　▼同9日小林　邦昭（享年68　元プロレスラー） 　▼同18日サルバトーレ・スキラッチ（享年59　サッカー元イタリア代表FW）結腸がん 　▼10月22日旭国（享年77　大相撲元大関＝本名太田武雄） 　▼11月12日北の富士（享年82　大相撲元横綱＝本名竹沢勝昭）