巨人大物OBが指摘「丸の2番最強論は危険だ」
今季のペナントレースを占う広島対巨人のオープン戦2連戦の第1ラウンドが5日、マツダスタジアムで行われ、広島が4-1で快勝した。FAで巨人へ移籍した丸佳浩は「2番・センター」でスタメン出場。ブーイングではなく温かい拍手で迎えられたが、3打席立ち2三振、1四球と沈黙、原巨人の超攻撃的打線も不発に終わった。巨人OBで元ヤクルト、西武監督の“大御所”広岡達朗氏は、「巨人は若手が目立たず何も変わっていない。丸の2番も危険だ。彼の良さが生きない」と巨人に辛口の警鐘を鳴らす。巨人は昨年対広島に7勝17敗1分と大きく負け越したことがV逸の原因にもなった。原監督はメジャーで主流になっているバント無しの「2番打者最強論」を巻き返しの柱にしているが、“打倒広島”の切り札になり得るのか。
「メジャー理論を日本にあてはめるのは難しい」
平日のデーゲームだというのにマツダスタジアムには、22572人ものファンがつめかけた。目当ては、巨人にFA移籍した丸と人的補償で広島に移った長野久義の“因縁の2人”の対決だったのだろう。初回に「2番、センター、丸」の場内アナウンスが響く。カープの礼儀正しいファンは、罵声やブーイングを封印。大歓声とまではいかなかったが温かい拍手で迎えた。だが、丸は、広島の先発、床田寛樹の148キロのストレートを振って空振りの三振。3回には、吉川尚輝の逆方向への二塁打で作った二死二塁の得点機に打席に立ち、ここは四球でつないだ。 こういう形で出塁率を高めるのも「2番・丸」の仕事だろう。しかし、5回一死一塁からは、左腕、飯田哲矢のストレートを見逃して三振した。この日に限っては「2番・丸」は不発だった。 広岡氏は「2番・丸」を問題視した。 「メジャーで成功している2番最強論をそのまま日本の野球にあてはめて成功させることは難しい。そもそもの野球の土壌が違う。私は、丸の2番起用は危険だと考えている。好きに打て、という野球で143試合をマネジメントできないし、丸なりに色々考えてしまうだろう。逆に彼の持ち味が生きない」 原監督は、セイバーメトリクス理論に基づきメジャーで主流となっている「2番最強論」を採用し丸の2番起用を決めた。「1回に2、3点を取る野球」が狙いだ。ライバル広島を相手にチマチマと点数を重ねても打ち負けるというトラウマも、その背景にあるのかもしれない。 確かに先制点を奪うことがゲームを優位に運ぶ最大条件の一つではあるし、日本でも2年前に楽天が、強打者のペゲーロを2番に置いてクライマックスシリーズへ進出する快進撃を見せ、昨季も、日本ハムが大田泰示、ヤクルトが青木宣親、横浜DeNAがソトを2番に起用して一定の効力を発揮した。 だが、大田は78試合、青木が86試合、ソトは48試合と1シーズンを通じて最強2番が押し通されたわけではなかった。 広岡氏が、危惧するようにバントの選択は無いが、好きに打つというわけにもいかない。状況によっては引っ張っての右打ちの進塁打も必要だし、1番の吉川の機動力を生かすのであれば、その動きを待ちながら自らのカウントを犠牲にすることもある。この点は3番を打っていた広島時代にも、1番、田中広輔、2番、菊池涼介が足を使うため、経験済みで不安はないだろうが、実は、考えることは、3番よりも2番の方が確実に多い。広島のV3時代に丸に2番経験は一度もないのだ。 実際、5回の場面ではカウント3-2となり一塁走者の吉川はスタートを切っていた。高めのボールを見逃した丸は走者のスタートのタイミングを気にするように少しボール臭いストレートに反応しなかった。プレッシャーのかかるFA移籍に加えて2番という慣れないポジションを任された丸が自滅するパターンを広岡氏は危惧するのだ。 また広岡氏は「丸の手のヒッチの動きの大きさが私にはどうも気になっている」と指摘した。丸は、大きく動かすテイクバックの動作の中で、独特の“間”を作るのだが、今季は少しだけバットを寝かせて構えるなどフォームをマイナー修正している。広岡氏は、その点も「ストレートに差し込まれるのではないか」と問題視している。 「2番最強論」は、はまれば爆発するが、逆にチャンスや勢いを簡単に消すというリスクがある。