【新人記者カメ日記・トレセン縦〝桜〟無尽】スケール満点のピコチャンブラックがホープフルS制覇を狙う
有馬記念が終わり、今年も中央競馬が終わる…。なんて思っている人はいないでしょうか? いまだに有馬記念のあとにGⅠが残っていることには違和感を覚えますが、28日にホープフルSが行われます。毎年、粒ぞろいの2歳馬が集結しており、来年のクラシックを占う意味でも重要な一戦。以前、当コラムで紹介したマスカレードボール(美浦・手塚貴久厩舎、牡)も新馬、アイビーSで無傷の2連勝を飾りって駒を進めてきましたが、個人的にもう一頭注目している馬がいます。それが、ピコチャンブラック(美浦・上原佑紀厩舎、牡)です。スケール満点の素質馬に会いに、厩舎へうかがいました。 7月20日福島のデビュー戦(芝2000メートル)では、スピードの違いで他馬を圧倒。楽にハナを切ると直線もノーステッキで7馬身もの差をつけました。デビュー前に取材した際、上原佑調教師は「まだまだ粗削りで緩さがある。それでも調教では動くし、いいものを持っている」と評価しており、順調に成長すれば大舞台を目指せるのではないかと感じていました。約3カ月の休養を挟み迎えた2戦目のアイビーSでは、前述したマスカレードボールに惜敗。馬体面では体重が14キロも増加しており、少しですが見た目に貫禄が出てきた様子。敗れはしたものの、収穫はあったように思えます。 前走後はすぐにホープフルSを目指すことが決まり、11月末に美浦トレセンへ帰厩。1週前の18日は川田将雅騎手と初コンタクトをとり、Wコースで6ハロン81秒8―11秒6をマーク。3頭併せの真ん中から力強いフットワークで駆け抜けていました。1週前としては上々の動きに見えましたが、指揮官は「川田騎手が乗ったらかなり馬にスイッチが入ってしまった。助手が乗っているときはそこまでテンションが上がらないのですが、きょうはコースに入る前からかなりテンションが上がってしまって、ちょっとコントロールに苦労してました」と辛口な評価。ただ、マイナスな面だけではなく、「ジョッキーは感触をつかんでくれたし、能力もかなり評価してくれた。あとは気持ちの面を当日までにつくっていく感じ。折り合いが大事になるが、前走は馬の後ろで我慢できていたし、手の内に入れば競馬でも力を出してくれると思う。コーナー4つのコース形態も合うと思う」と前向きに話してくれました。 厩舎は開業3年目を迎える今年、2歳戦で好調。すでに7頭が勝ち上がっていいます。そのなかでもピコチャンブラックは特別な存在だといい、「追い切りを見ていても、他の2歳馬とは少し違いますよね」と目を細める。「ホープフルSはかなりいいメンバーがそろってますけど、この馬も素質は負けてないので楽しみです」。
勝てば厩舎の初重賞、そしてGⅠ初制覇もかかる一戦に、指揮官は「積極的に狙っていきたい。この馬の能力を何とか出してあげられるように」と力を込めます。不安要素が少ないわけではないですが、それ以上に可能性を感じる一頭であるピコチャンブラック。年末を締めくくる出世レースでの好走を心から願っています。(東京サンケイスポーツ・吉田桜至郎)