新車を買ったのになぜこんなことが…自動車ディーラーで起こりがちな「3つの悲劇」
新車に傷があった、納車時期が遅れた、整備や修理、車検で預けたらとんでもないトラブルに見舞われた――筆者の実体験も基に、起こりがちな「自動車ディーラー事件簿」をお届けします。最終組立工場から出荷されたクルマが購入者の手元に届くまで、どんなドラマがあるのでしょうか?(モータージャーナリスト/安全運転インストラクター 諸星陽一) ● 悪質な自動車ディーラー 実際のトラブル事例とは? クルマは、「人生で住宅の次に高い買い物だ」と言われます。今の住宅は、工場で生産されたパーツを現地で組み立てるプレハブ方式が主流。つまり、家を建てる現地が最終組立工場だと言えます。現地ではさまざまなスキルの職人が作業をするため、手抜きや施工ミス、それらのチェック漏れが発生するケースもあります。これが、欠陥住宅などと言われるトラブルの原因です。 一方でクルマの場合は、最終組立工場も厳重に管理され、そうしたミスは起きにくいとされています。特に、日本国内の工場で製造されるクルマは厳格に管理されています。 他方で、かつて輸入車は現地工場の管理がゆるく、アメリカ車などは「金曜日と月曜日に作られたクルマは買うな」というジョークがあったほど。これは、休日前の金曜日は気持ちが浮き立ち仕事が手に付かず、月曜日は遊び疲れて手抜きになる、といったことを示していました。もちろんこれはジョークであって、クルマが故障した際に「運が悪かったね」というような意味が込められているとも言います。 さて、前置きが長くなりましたが、今回は「ディーラー事件簿」と称して、自動車ディーラーと購入者の間に起こるさまざまなトラブルを、オムニバス形式でお届けしましょう。最終組立工場から出荷されたクルマが、購入者の手元に届くまで、どんなドラマがあるのでしょうか?万全の体制で納車されるはずの新車ですが、トラブルがないわけではありません。
● 輸入車と国産車で 異なるディーラーまでの道のり 本題に入る前に、まず、新車がユーザーの手に届くまでの流れを整理しましょう。輸入車のほうが、工程がたくさんあるので、輸入車の説明からします。 正規輸入車は船に載せられて、日本各地の港に到着します。その後すぐにディーラーに送られるわけではなく「PDIセンター」と呼ばれる整備所に送られます。 船積みされ1カ月から2カ月もの旅をしてきたクルマには、潮や汚れが付着していますし、輸送中にキズが付くこともあります。また、日本の保安基準に合わせる作業を施すこともあります。新車というと工場から出てそのまま補修されないクルマだと思う人も多いのですが、輸入車の場合は必要に応じて補修が行われるケースが多いです。もちろん、細心の注意を払って輸送され、補修などされずに済むモデルも存在します。PDIセンターで準備が整ったクルマはディーラーに送られます。 国産車の場合は、工場から出荷後、直接ディーラーにクルマが届けられます。この先は国産車も輸入車も同じ流れで、ディーラーでは保護のために吹き付けられているワックスを洗い流し、保護フィルムなどを除去し、ディーラーオプションを取り付けて、ナンバーを取得し、納車となります。このプロセスの間に、ユーザーが希望する用品の取り付けやボディコーティングなど、さまざまな作業が入ることもあります。 ● ディーラー事件簿(1) 新車に傷がついている! さて、いよいよ本題です。よくあるパターンその1は、納車されたクルマに依頼した通りのオプションや用品が取り付けられていなかったり、取り付け方法が間違っていたりするケース。この場合、すぐにディーラーにやり直してもらいましょう。 面倒なのは、納車されたクルマをチェックしていたらボディにすり傷を発見したり、インテリアのオプション取り付け時に付いたと想像できる傷を発見したり、というケース。何百万円という大金を払って買ったクルマに傷が付いていたら、「別の新車と交換しろ!」と思わず言いたくなるところですよね。 しかし、残念ながら新車交換が認められることは、まずありません。内装なら部品交換、外装なら塗装修理となるのが通常です。 筆者の知る中では一例だけですが、クルマを買い戻すというパターンがありました。某メーカーの国産車です。コンパクトSUVでブレーキが効かないトラブルに見舞われた個体があり、部品を交換してもソフトウエアを書き替えても解決せず、ディーラーが販売価格で引き取ったそうです。恐らく、ディーラー判断ではなく、メーカー判断で引き取りになったのだと思います。