「損した気分」「松屋はやめて吉野家に行くか…」との声も。牛丼チェーンが導入し始めた「深夜料金」に不満の声が続出する“本質的な理由”
それに影響を受けた吉野家も、こうした都会に流入した単身の若者たちに大いにウケただろう。当初から、一般的な時間には食事を食べることができない人々のための「インフラ」的な側面が強かったのである。 その後も牛丼チェーンは、こうした単身者を中心として「社会のインフラ」の一つとして機能していく。特に単身世帯は、1960年の358万世帯(16.2%)から一貫して増加し続けており、2010年には日本全国の32.4%が単身世帯だといわれている。
集団就職の時代から一貫して、こうした単身者を受け入れる業態の需要は存在し続けてきたわけだ。 こうして「社会のインフラ」としての牛丼屋はどんどん広がっていく。 1973年に吉野家がフランチャイズチェーンをはじめてから、すき家、松屋、なか卯などが続き、全国どこでも牛丼が食べられるようになった。当初は都心店を中心とする展開だったが、徐々にファミリー層も取り込みながら郊外店も生まれてくる。現在も牛丼屋全体の数は微増を続けている。こうした展開を経ながら、牛丼屋は「社会のインフラ」的なポジションを保ってきたといえるだろう。
実は近年では、牛丼チェーン各社も「社会のインフラ」であることを意識的に押し出している。 すき家を運営するゼンショーホールディングスは「食のインフラ」として店舗営業を行うことをホームページで述べている。あるいは吉野家も2020年にファミリーセットを開始する際、「人々の生活に寄り添い、“牛丼”という日常食を提供する社会インフラとして可能な限り食事を提供することが、吉野家が果たすべき役割だと考えております」と述べたのだ。
企業側もこうしたことを意識するぐらい、「24時間営業している牛丼屋」は私たちにとって「慣れた」ものになってきた。ある意味、牛丼の深夜料金設定は、公共料金の値上げのようにさえ、受け取られているのではないか。 ■牛丼屋は生活に馴染みすぎた? 牛丼屋がいかに日本人の意識に染み付いているかは、2010年代からネットスラングとして使われる「チー牛」という言葉にも表れている。これは、「牛丼屋でチーズ牛丼を食べてそうな男性」のことで、「オタク」「ネクラ」「陰キャ」を表す隠語。