兵庫県斎藤知事“不信任案可決”で辞職・失職でも「退職金1561万7700円」は“満額支給が妥当”…なぜ?
不信任の議決で問われるのは「政治責任・道義的責任」
第三の理由として、不信任の議決で問われる知事の責任は「政治責任・道義的責任」であり、「懲戒事由」とは根本的に異なることを指摘する。 三葛弁護士:「不信任の議決が行われたからといって、知事が一般公務員やサラリーマンでいう懲戒事由に該当すると断定できるわけではありません。 都道府県知事が議会に不信任の議決をされたことは過去に4例あります(【図表】参照)。うち2例は知事と議会の多数派が政治的に厳しく対立した結果でした。 実際、2002年の長野県の田中知事は失職して出直し選挙に出馬し、当選しています。 また、他の2例は知事に犯罪の嫌疑があり、逮捕または書類送検されたというものです。犯罪事実が確定していない段階で、あくまで政治責任・道義的責任をとって辞職を選んだものです。 議会が不信任の議決を行う場合に、いわば懲罰として退職手当の不支給や減額を決めていいとなると、ある意味で議会が懲戒権者ともなってしまうことから、二元代表制に基づく首長とのバランスを崩し、首長が萎縮することになりかねません」 知事は都道府県の行政のトップであり、知事に対する懲戒権を行使する者はいない。知事は他の職員と異なり、住民の直接選挙で選出され、民意を体現する存在だからである。だからこそ、その退職手当は「民主主義を運営するためのコスト」と位置付けられる。 つまり、不祥事を起こすような知事を選んだ場合、退職手当の支給も含め、究極的には、その任命責任を負うのは住民ということになる。有権者がその覚悟を持って選挙に臨むことが求められるということを意味する。 不信任の議決が成立した場合、「県民のため」を強調する斎藤知事がどのような選択をするのか、注目される。
弁護士JP編集部