元巨人スカウト部長が語るドラフト会議の裏側「坂本勇人を最初から1位指名するのは不安だった」
いよいよ明日に迫ったドラフト会議。昨年、NPBに入団したのは育成選手を合わせてわずか122人だ。 【動画】なぜ外れ1位だったのか?巨人の元スカウト部長が語る「坂本勇人獲得」の裏側 そんなアマチュア選手たちの実力を見極めるのは12球団のスカウトである。12球団のスカウトは選手のどこを評価しているのだろうか。またどんな苦労があるのだろうか。 スカウトとして大洋・横浜、巨人で数多くの選手獲得に携わり、巨人ではスカウト部長まで務め、現在は東海大の監督を務める長谷川国利氏が現在の巨人の主力選手たちの獲得秘話を語ってくれた。
坂本の外れ1位指名は担当スカウトも「直前まで知らされていなかった」
――巨人のスカウト時代に担当して印象に残っているのは何年のドラフトでしょうか。 長谷川監督 2006年です。担当だった堂上 直倫内野手(愛工大名電)をドラフト1位で指名して、クジが外れた結果、指名させていただいたのが巨人の坂本 勇人(光星学院=現・八戸学院光星)だった年です。坂本選手は大森 剛スカウトが担当していましたが、まだ人間関係が構築できていなかったんです。球団によって地域とのつながりの強さも変わります。僕は堂上のところに行きながら、同時に光星学院の練習にもお邪魔していたんです。 ――堂上選手を先に1位指名しましたが、球団として当時はどのようなところを評価していたんですか? 長谷川監督 原監督とも話して堂上の方が上だと考えて指名したんです。 ――大森スカウトから「坂本選手を1位で行きたい」という声は無かったんですか? 長谷川監督 会議の段階で彼は「最初から1位で行くのは不安」と言っていました。大森には山下部長や原監督からは堂上が外れたらすぐに坂本を指名するという話は、直前まで伝えてなかったと思います。 ――巨人は二岡選手がレギュラーでしたが、堂上選手や坂本選手の指名に踏み切ったということは、それだけ次世代の遊撃手が欲しかったということなんですね。 長谷川監督 そこは二岡と坂本の年齢層の差ですね。一回りちがうわけです。遊撃手というのは怪我したらすぐに他の選手に変われるわけではない。厳しいポジションというのもあります。 ――坂本選手の獲得が決まって大森スカウトとはどんな話をされましたか? 長谷川監督 特にして無いです。スカウトは取ってなんぼじゃないですから笑…。僕が印象に残っている先輩のスカウトで、オリックスの三輪田 勝利さんって方がいらしたんですよ。イチロー(愛工大名電)の担当スカウトです。その三輪田さんは、「イチローを1位で指名した上で今日のイチローがあるなれば、『自分の眼力は中々のもんだ』と長谷川に自慢する。ただ彼は4位だったよ」と話してくれました。 イチローは三輪田さんの地元の後輩でもあるし、たまたま「枠があるから指名しておこうかな」という流れだったそうです。イチローの活躍に「それはもうオレが1番びっくりしてる。何より頑張ったのは本人だ」って仰っていたのが印象的でしたね。 ――坂本選手はもちろん、 堂上選手も昨年まで現役でプレーされました。両選手共に長い間活躍する選手でしたね。 長谷川監督 担当していた選手が活躍すれば、スカウトの評価となりがちですけど、私は「この選手は厳しい」と見切りをつけた選手が他の球団に入り目が出なかったとき、スカウトの眼力が評価されるべきだと思います。それはドラフト時に評価をしていながら、縁が無く他球団にいって活躍した場合も同じです。そのスカウトにお世話になりたいという人もいるので。