【セックスレス】産婦人科医に聞く、日本におけるセックスレスの実情は? 解決策や性機能外来についても調査!
4. セックスレス解決策②【性機能障害】濡れない、怖い、痛い。セックスの悩みは性機能外来やセックス・セラピストに相談を
編:そもそも性機能障害は治るものなのですか? また、どこに相談したらいいのでしょうか? 大:性の悩みを扱う診療科や医療機関は非常に少ないのが現状ですが、女性なら婦人科へ、男性の場合は主に泌尿器科や精神科でセックス・セラピーもしている診療科を受診します。 女性は閉経後、腟の乾燥感や性交痛を感じる人が増える傾向にあります。このケースには、女性ホルモンの経腟投与や全身の女性ホルモン補充療法(HRT)といった薬物療法が有効です(どちらも閉経に伴う腟乾燥感からの痛みに有効)。または潤滑ゼリーなどを用いる場合もあります。男性の勃起障害(ED)には治療薬があります。 一方、挿入障害など心因的・精神的な問題を抱えている方には、カウンセリングや行動療法を併用します。しかし通常の医療機関では対応していないことが多いため、日本性科学会認定のセックス・セラピストのいる相談機関や医療機関を受診されるといいでしょう。
5. 実際の診察ではどのようなことが行われるのか? 治療に大切なのは、性器やセックスへのネガティブ感情をなくし、リラックスすること
編:婦人科の性機能外来の場合、どんな診療を行いますか? 内診台に乗るのが怖くても受診できるのでしょうか? 大:挿入障害の患者さんに対して無理な内診は行いません。徐々に診察に慣れていき、自信をつけていくことが大切です。開脚ができるか、外陰を触れられても大丈夫か、陰唇や腟まで触れられるかなどを段階的に進めていきます。 ■挿入障害の治療では、どんなことをする? 編:挿入障害の治療は、どのように進めていくのでしょうか? 大:本来なら、痛みの背景に何か他の病気や異常が隠れていないかどうかの診察は必要ですが、挿入障害によって内診が難しい場合には、行動療法からはじめることがよくありますね。 治療を進めていく上で大事なのは、セックスや性器に対して否定的な感情を消し去ること、そして性的な行為の際にリラックスできるようになることです。まずはご自身で性器に触れたり(セルフ・タッチング)、鏡で見てみたりしてもらいます。女性の身体のしくみや腟の機能などを医師が医学的・解剖学的に説明して、腟は意外に丈夫であることなどを理解してもらうことも大事ですね。 ■治療で大切なのは、カップルで取り組むこと、挿入にチャレンジしないこと 編:自分自身の身体に向き合い、理解することから始めるのですね。そのほかに治療の中で伝えていることはありますか? 大:挿入障害の治療やセックス・セラピーで大事にしていることが2つあります。 1つはカップルで取り組んでもらうこと。性機能障害の治療では二人の関係性が大きく影響するので、一緒に治療を進めることを勧めます。治療の目的をパートナーが知らないのではうまくいきません。「パートナーが来てくれないケースは治らないんですよ」と、きっぱり伝えることもありますね。二人から話を聞くことで、我々セラピストの方も情報量が増えて解決の糸口が見つかりやすくなります。 もう1つは意外かもしれませんが、「挿入にチャレンジしないこと」です。行動療法の1つ、カップルで身体に交互に触れ合う「感覚集中訓練」では、指も含めて挿入禁止をルールにします。挿入を目的にすると、できないことでセックス自体が嫌になってしまいかねません。そのため、挿入以外のことで身体を通じたコミュニケーションを楽しむことから始めてもらいます。 こうした行動療法は、ご自身の強いこだわりや恐怖心に打ち勝つために行うものなので、本人にとってはしんどい治療になることもありますが、焦らずに取り組むことが大切です。 interview&text:Yuko Oikawa illustration:an edit:Ayano Homma