「私が食べたのは本当に間人ガニか」…産地偽装事件に揺れた1年、信頼回復の取り組みは今
京都府京丹後市は今年、「 間人(たいざ)ガニ」を巡る産地偽装事件に揺れた1年だった。
事件では、同市の水産品加工販売会社の元役員らが産地を示す緑色のタグを不正に入手し、兵庫県豊岡市で水揚げされたズワイガニに取り付け、高値で販売していたことが発覚。「幻のカニ」とも呼ばれる間人ガニのブランドが悪用された形で、市内の宿泊施設には「私が食べたのは本当に間人ガニか」との問い合わせもあったという。
府警の摘発後、「信頼回復」へ向けた取り組みが始まった。府漁業協同組合は間人以外の漁港も含め、有識者や流通業者らで再発防止策を話し合う協議会を設置。府内で水揚げされたカニには従来のタグに加え、水揚げ日や場所が確認できる2次元コードと、通し番号が印刷された白いプレートを取り付けるルールを導入した。プレートの使用枚数なども厳重にチェックする。
今シーズンのズワイガニの初競りは、海が荒れたため解禁日(11月6日)から3日遅れたが、11月の府漁協全体の雄の水揚げ量は昨年同月並みの16・2トン。京丹後市観光公社によると、宿泊施設の利用状況も前年並みといい、今のところ風評被害は起きていないようで安心した。
記者はかつて、豊岡市と福井県の旧三国町(現・坂井市)でズワイガニ漁の底引き網漁船に同乗した経験がある。海が 時化(しけ)ると、船は上下左右前後あらゆる方向に揺れる。漁師たちはそんな中でも、甲板にカニを引き上げ、冷たい波しぶきをかぶりながら黙々と仕分けていた。
その仕事の厳しさを知っているだけに、今回の偽装は仲間の漁業者をも裏切った事件だと感じる。胸を張って地元の味覚を届けられるよう、府内全域で新たなルールの順守を徹底してもらいたい。(松田聡)