笹生優花の原点は「なんで、できない?」 “一日500球”のジュニア時代
「最初は『なんで? なんで、できないんだろう?』という感じにはなったけれど、やっぱりそこは(自分の持ち球は)ドローなんだなっていうのをしっかり受け入れてから、フェードを習う、覚えようとしたのが、方向的には良かった」。意図するフェードの球筋を打つには、まずスイング理論を理解しないといけない。勉強はスイングだけでなく、クラブの構造を知ることにも及んだ。 米国のツアー会場では今、女子プロには珍しくメーカー担当者とギア談議に花を咲かせたり、仲間に道具のアイデアを授けたりする笹生の姿がある。
■求める先はオールラウンダー
21年の「全米女子オープン」では、ドローボールを中心にして攻めるスタイルでメジャー初優勝。2度目の制覇となった24年はフェードボールで見るものをうならせた。最終日、232ydと短い16番パー4のティショットで3Wのフェードボールを選択。見事にワンオンさせるパワーとテクニックを見せつけ、2パットのバーディを奪い栄冠を手にした。 昨春からはジョーダン・スピースらが師事するキャメロン・マコーミック氏など複数のコーチにアドバイスをもらいながら、ショットからパッティングまで長い時間をかけて、より自分に合う打ち方を模索している。正和さんは「最初、優花は『コーチはいらない』って言っていたけれど、教わるとなるとやっぱりコーチによく質問している」と話す。今季は専属トレーナーをつけて体の構造の理解を深め、スイングにも生かしてきた。子どもの頃からの探求心の強さは変わらない。 「アプローチショットだけとかではなく、全体的にうまくなりたい。(得意な分野が)偏りたくない」とオールラウンダーと言われるゴルフスタイルが目指すべき姿だ。「(フィリピンに渡ってから)ここまで来るのに15年かかった。引退するまでにその理想のスイングをできるようになるのか、またはできないまま引退して終わっちゃうかもしれない。まだ完成ではないので、頑張りたい」 笹生はインタビュー中、日常的に「ゴルフを楽しみたい」と口にする。その言葉の裏には、日々の努力が詰まっている。(聞き手・構成/石井操)