通販参入 中国4000年の「美乳霜」は大反響 初めての女性客に〝プレゼント〟 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<18>
《平成元年に商売のため、初めて中国を訪れた。取引先の天津の貿易会社は立派な国際デパートを経営していた》 【写真】石田重廣さん、感受性が豊かで肉が苦手に 5階建ての大きなデパートで、外国製の電化製品とか洋服とかがいっぱい陳列されていたんです。なによりすごかったのは店員さんがいっぱいいたこと。2メートルごとに1人、ざっと見て1フロアで200人くらいいるんです。でもお客さまがまったくいない。池袋の丸井みたいな大きなデパートなのに、店員さんばかりでひっそりしている。違和感を覚えましたね。 お客さまがいないのはなぜか。当時の中国には外貨兌換(だかん)券と人民元の2つの紙幣があったんです。で、その国際デパートで買い物ができるのは外貨兌換券だけで、人民元は使えない。外貨兌換券を持っているのは外国人か、中国の一部の人たちだけです。さらに天安門広場での騒動の影響もあって外国人や中国の人たちは外出を控えていた。だからお客さまがいないわけです。 それでも僕が中国に来た目的は、日本では手に入らないような商品を輸入して通信販売することです。そしてこの国際デパートには、魅力的な商品がいっぱいありました。 《個人輸入での通販事業が始まった》 僕が個人輸入で扱った商品は何か。中国風のグラスとか絨毯(じゅうたん)などのほか、髪がふさふさになるという育毛剤「101」や目の下のたるみを取るというクリーム、塗ればバストが大きくなるというクリーム「美乳霜」などの美容品です。こうして何種類かの商品について、天津の貿易会社と輸入販売の契約を結びました。で、帰国後に、商品の紹介とともに「中国4000年の歴史」「中国の一流デパートからご自宅へ」などのキャッチコピーをつけた新聞の折り込みチラシを配りました。いよいよ通販事業の始まりです。 初日から大反響でした。どれだけ注文がくるのか、予測がつきません。で、通販のために新たに雇ったオペレーターの女性たちが帰った夜8時からも、僕は1人で電話番をしました。忘れもしないその初日の夜、東京・中野の女性から電話がかかってきた。「美乳霜」を2つ買いたい、と。その女性が僕が初めて受けたお客さまだったんです。お名前と送り先、電話番号などを聞き、天津に郵送を頼みました。 「美乳霜」は1個1万2000円で、初めての注文はただただうれしかったですね。でもその後、請求書を送ったら、その女性から振り込みがなかったんです。オペレーターが確認の電話をしたところ、「お金がないから待ってください」って。で、オペレーターに「僕の初めてのお客さまなのでプレゼントします、って伝えてください」と頼みました。
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