尹錫悦大統領弾劾の行方…争点は「不法の重大性」韓国全土を混乱の渦に巻き込んだ“12.3戒厳令”【2024年重大ニュース】
2024年12月14日、韓国の国会で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案が可決された。議案可決の瞬間、国会は沸き立ち、デモ会場では地鳴りのような歓声が響いた。 【画像】国会議事堂の窓ガラスを割り建物内に進入する兵士 平時の「非常戒厳」宣言で混乱を招き、自らを弾劾に追い込んだ尹大統領。しかし最後まで戦う姿勢を崩していない。次に待つ憲法裁判所では、弾劾の妥当性を判断し大統領「罷免」の可否が審理されるが、専門家は「不法の重大性」が憲法裁で最大の争点になると話す。
「何が起きたか理解できず…」“12.3非常戒厳事態”に揺れる韓国
12月3日午後10時半、尹大統領は緊急の談話を発表し45年ぶりとなる「非常戒厳」を宣言した。「血を吐く思いで訴える」と始まった談話では、国会において野党が閣僚らへの弾劾を続け災害対策予備費や子育て支援手当などに充てる2025年度予算を大幅に削るなどして、国政をまひさせていると主張。「非常戒厳を通じて反国家勢力を撲滅し国家を正常化させる」と述べた。 さらに国民に衝撃を与えたのは、韓国全土を対象に出された戒厳司令部の「布告令」だった。布告令では「国会や地方議会、集会、デモなどの一切の政治活動を禁じる」「全てのメディアと出版は司令部の統制を受ける」などとし、「違反者は令状なしに逮捕・拘束ができる」という強行的な対応を宣言するものだった。市民や韓国政府関係者、専門家に当時の印象を聞いても「何が起きたか理解できなかった」「北朝鮮との戦争につながる特異動向が確認されたのかと考えた」といった声が聞かれ、多くの人が状況を飲み込めず困惑したことが分かる。 国会も混乱した。戒厳令が出された3日深夜、取材のためにソウルの国会議事堂に向かうと、すでに正門前では多くの人が戒厳令の解除を求めて声を上げ、警戒に当たる警察官や兵士と対峙していた。付近の道路には装甲車が待機し、空には軍のヘリコプターが複数飛んでいて異様な光景が広がっていた。一方で、警察官や兵士が市民やメディアを強制的に抑え込もうとする様子は見られず、状況管理に徹している印象を受けた。 国会には戒厳軍が約280人の兵士を投入し、一部は窓ガラスを割って建物内に進入した。しかし戒厳軍は国会を封鎖するに至らなかった。結果、4日未明に開かれた国会本会議で戒厳令の解除要求決議案が190人の与野党議員の賛成により可決。その後、閣議を経て午前5時頃に戒厳令は解除された。 一連の「騒動」とも「事件」とも言える出来事は約6時間で一区切りをつけたが、市民や野党からの反発は到底収まらず、戒厳令から11日後、一部与党議員の造反もあり尹大統領の弾劾訴追案は可決された。