【毎日書評】抗うとは?マスコミに人生を狂わされても「僕は親が好きなので」といえる強さの秘密
僕はもう好きになっちゃってるので
話をしていて、とても印象的だったことがあります。死刑囚として大阪拘置所で暮らす母親のことに話がおよんだときのこと。ちなみに林くんは母親の無罪を信じている反面、「もしも母親がやっていたのだとしたら、そのときには認めなくちゃいけない」とフラットな考えを持っています。 そのうえで、こうも話してくれたのです。 いくら過去に法を犯した(筆者注:先述した保険金詐欺のこと)からといっても、僕はもう(親のことを)好きになっちゃってるので、嫌いになれって言われてもなれないんですよ。(151ページ) だって、切れます? 「法を犯した。もう明日から犯罪者だから俺に関わるな」って、そんなことができる親がいるかっていう。寄り添うんですよ、誰だって。守ろうとするし。(152ページ) 本当にそのとおりだと思います。少なくとも、決して生きやすいとはいえないであろう現在の状況下にあって、こういうことばを口にできるというのは純粋に素敵だなと感じました。そして、そんな思いこそが、林くんにとっての“抗う原動力”なのだろうなとも思います。 でも、反発も怖いんですよね。「くたばれ」「お前も死ね」「お前も死刑になれ」って(クレームが)来たときに、僕はそれに抗えなくて。 会社が終わって、「ああ、疲れた」と携帯電話を開いてXを見たときにそういうメッセージが届いてたりすると、もう精神的に参っちゃって。(177ページ) これもまた、納得できる話。だいいち、もし一度でも過ちを犯した人間が生きていけないのだとしたら、失敗だらけの人生を送ってきた僕など生きる価値すらないということになるだろうなと思ったりもします。(151ページより) 部屋で飲みながら話をしているとき、林くんはふと、「なにもかも嫌になってるんですよね。誰にも会いたくないし、なにをしてても楽しくないしという」と口にしました。 しかしそれは無理もないことで、いわれのない誹謗中傷を浴びていたら、誰だって落ち込むはずです。だからこそ、ひとりでも多くの方に、「もしも自分が同じ立場に置かれたら、どう感じるだろう?」と考えていただきたいのです。 ▼前編はこちら >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: フォレスト出版
印南敦史