ウクライナに希望の白星を…日本に避難して十両に昇格した安青錦「祖国へ強い姿を」
10日に初日を迎える大相撲九州場所(福岡国際センター)にウクライナ出身の安青錦(あおにしき)関(20)(本名ヤブグシシン・ダニーロ)が新十両として臨む。ロシアによる侵略で日本に避難したが、関西の相撲仲間に支えられて稽古を積み、初土俵から1年で関取に昇進した。「今があるのは日本の『家族』のおかげ。ドイツにいる両親に土俵入りする姿を見てほしい」と話している。(福永正樹)
7歳で相撲
ウクライナ中部ビンニツァで生まれ、7歳の時に地元のスポーツクラブで相撲を始めた。ユーチューブなどで大相撲の動画を見て「日本で力士になりたい」と思い、稽古に励んだ。2019年、堺市で開かれた18歳以下の世界ジュニア選手権100キロ級に15歳で出場し、3位に入った。
この時に出会ったのが当時関西大の相撲部員だった山中新大(あらた)さん(25)。力強さに感銘を受けた山中さんから声をかけられ、連絡先を交換した。山中さんとは帰国した後もSNSで「大相撲の力士になりたい」「番付はどうやって決まるの」などと英語でやり取りを重ねた。
大学生だった22年2月、ロシアのウクライナ侵略が始まり、仕事でドイツ・デュッセルドルフに住んでいた母のもとに身を寄せた。戦禍から逃れたが、相撲のことが頭を離れなかった。「このままでは後悔する」と、山中さんに「日本に避難できますか」と連絡を取った。関大相撲部の主将だった山中さんは「大丈夫」と受け入れを快諾し、ビザの申請方法を調べて教えてくれた。
関西大相撲部で稽古
同年4月に来日し、約8000キロ離れた異国での生活が始まった。神戸市内にある山中さんの実家で寝食を共にしながら、週に5回、大阪府吹田市の道場で関大相撲部の稽古に練習生として参加。日本語教室にも通った。山中さんは「言葉も分からない中で泣き言を口にしない姿に覚悟を感じた」と振り返る。
山中さんの母校・報徳学園高(兵庫県西宮市)相撲部でも汗を流した。同部元監督の知人である安治川親方(元関脇・安美錦)の目に留まり、同年12月、安治川部屋(東京都江東区)に入門した。その後も山中さんとの親交は続いた。