糖尿病、高血圧などの生活習慣病や認知症との関連も指摘<睡眠の質>。上質な睡眠のために行くべきは「歯医者」だった?歯科医「閉経後にリスクが高まる症状も…」
今年、厚生労働省が発表した「健康づくりのために睡眠ガイド2023」では、成人と高齢者は睡眠の量だけでなく質、起床時に「体が休まった」と感じる「睡眠休養感」も大切だと指摘されています。この睡眠休養感が低くなる原因の1つが、睡眠時無呼吸症候群などに代表される「睡眠障害」です。一方で、医療法人社団アスクラピア統括院長の永田浩司先生によると、そうした睡眠障害を歯科で早期発見、治療する「睡眠歯科」が今注目されているそうです。睡眠の質を上げるために、歯医者さんでできることとは一体? 永田先生に解説していただきました。 なぜ50代以降の女性で<口臭リスク>が一気に高まるのか?実は「更年期」や「あの装置」が影響していて…原因とセルフケアを歯科医師が解説! * * * * * * * ◆健康のためには質の良い睡眠が不可欠に 睡眠には疲労回復だけでなく、免疫力を高めて病気を防ぐ、脳内の老廃物を取り除く、ホルモンバランスを調整するといった役割があります。 不眠や睡眠不足が続くと糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病にかかりやすくなることやうつ病のリスクが高まることが分かっています。特に近年はアルツハイマー型認知症との関連が指摘されていることからも、良質な睡眠の重要性が改めて注目されているのです。 このように睡眠の重要性が広く知られるようになる一方で、日本では睡眠の悩みを抱えている人が増えています。 その一方で、睡眠の質を高める上で今注目されているのが、「歯科」との連携です。 睡眠に関連する医療の中でも歯科に特化したものは「睡眠歯科」とよばれていて、特にアメリカでは研究や臨床が進んでいます。日本では患者さんの認知度は高いとは言えないものの、歯科医療業界では非常に注目されている分野です。
◆睡眠歯科で扱われるものとは 睡眠歯科で扱うのは、主に睡眠時無呼吸症候群やいびき、ブラキシズム。いびきは寝始めにかく程度なら心配ありませんが、大きないびきは呼吸が浅くなる低呼吸の可能性があります。 さらに大きないびきの間に呼吸が止まる無呼吸の状態が何度もあるのが、睡眠時無呼吸症候群です。 これにより低呼吸と無呼吸によって脳が覚醒状態になり、十分な睡眠を取ることができないため、日中に強い眠気を感じてしまい、生活に支障が出る恐れがあります。 睡眠時無呼吸症候群には、気道が塞がって起こる閉塞性、脳の呼吸中枢に原因がある中枢性があり、睡眠歯科の対象となるのは、患者の大半を占める閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。 ブラキシズムは口腔内悪習癖ともよばれ、上下の歯をギシギシとこすり合わせるグラインディング(いわゆる歯ぎしり)や、無意識に歯を強く食いしばったり噛み締めたりするクレンチング、歯をカチカチと合わせるタッピングに分けられます。 これは日中目覚めている時でも起こりますが、睡眠歯科の対象は寝ている間に起こる睡眠時ブラキシズムです。 ブラキシズムの多くは浅い睡眠のときに起こることが分かっています。睡眠時は目覚めている時の何倍もの咬合力が出るため、歯への負担は相当なものになります。 また、睡眠時無呼吸症候群とブラキシズムには相関関係があることが分かっています。睡眠時無呼吸症候群の改善によってブラキシズムを減らすことができ、ブラキシズムの減少によって、睡眠時無呼吸症候群の発生を抑制できます。