「踊る大捜査線」で欠けていた室井慎次の最終章 脚本・君塚良一が“室井の終焉”を執筆した理由
27年前、連続ドラマ「踊る大捜査線」は組織に生きる人々の葛藤と信念を鮮やかに描き、高い評価を得た。続く劇場版1作目『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』で社会現象を巻き起こし、2作目の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の打ち立てた邦画実写興行収入歴代ナンバーワンの記録はいまだに破られていない。その立役者が、亀山千広プロデューサー、本広克行監督、そして脚本を担当した君塚良一だ。2024年、12年ぶりに「踊るプロジェクト」が再始動し、『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』の2部作が誕生したが、君塚はなぜいま、“最後の室井慎次”の物語を執筆したのか。(以下、『敗れざる者/生き続ける者』のネタバレがあります) 【画像】最新の青島!2026年公開『踊る大捜査線 N.E.W.』ティザービジュアル
最終章がなかった
君塚は「室井慎次には最終章がなかったんです」と切り出し、「『踊る大捜査線』をずっと続けてきて、劇場版4作目『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』でいったん終わって。その後、僕も室井も年を重ねているんですが、彼は綺麗に終わっていない。年齢によって仕事が終わることがあるだろうし、あるとしたらそれを見つめたいし、描きたいし、ファンの方々と見守りたいと思いました」ときっぱり。その思いを抱いたのは、同じように警察官の信念を題材にしたドラマ「教場」シリーズを書いたことも理由の1つだったようだ。 「最後の章がないまま、ずっと置いておかれていた本のような感じがありましたね。若いころに現場の刑事を思って上に楯突いた男が、警視総監になっているわけがない。天下りしてどこかの企業に入るかと言ったら、それはないだろう。そんなふうにぼんやり考える時間が5年ほどあったんですよね。それで、プロデューサーにご相談したという流れです」と君塚は続けた。
亀山プロデューサーに送ったメールでは「『踊る』の欠けていた部分をやりたい、室井の終焉を3人で描きたいと、そういう言い方をしました」と語る君塚。「踊る」を生み出し、育てた亀山プロデューサーと本広監督と自身の3人が揃わなければ、最後の責任はとれないという思いがあったのだろう。