2024年ベストスマホ? 撮ってて楽しかった“ほぼカメラ”な「Xiaomi 14 Ultra」を振り返る
なにはともあれグリップが良い
個人的にかなり気に入ったのが純正グリップ。シャッターボタンとズームレバー、露出などを調整できるダイヤルと、カメラに必要なものが一通り揃っており、タッチパネルに触らずとも操作できる。スリープ状態でも、シャッターボタンを長押しすればカメラアプリが即起動。シャッターチャンスにも強い。 ラバーが巻かれたグリップは手に馴染み、適度な厚みもあって持ちやすい。1世代前だがまだまだ現役「Snapdragon 8 Gen 3」のサクサク動作と相まって、シンプルに撮影が楽しい。筆者は普段横構図が多いが、不思議と14 Ultraは縦構図がスパスパ決まり、おかげで1ページ目のように縦ばかりの作例になってしまった。 本体とグリップはUSB Type-Cで接続し、ラッチをスライドすれば固定される。グリップにもUSB Type-Cポートがあるので、本体側のポートが塞がれていても両方に給電できる。グリップつけっぱなしでも運用しやすいのはありがたい。 グリップがセットになっている「Photography Kit」には、装着時に使う専用スマホケースも付属している。これも手が込んでいて、67mm径のねじ込み式フィルターを取り付けられるようになっている。NDでもC-PLでもなんでもござれ。レンズキャップも取り付けられる。
気になる部分は「ある」
気になる点もある。それが2倍ズーム(正確には46mm)の画質だ。50mm付近の画角は、パースが程よく取れ、スナップからブツ撮り、ポートレートまでこなせる万能画角だが、23mmの広角をデジタルズームするためか、画質が少し甘い。 14 Ultraは全カメラに5000万画素センサーを搭載しているが、4画素を1つに統合してセンサー性能を引き上げるビニング処理のためか、基本的に約1250万画素で記録される(オプションで50Mモードもある)。確証はないが、どうも2倍ズームは1250万画素を2倍相当にクロップ(約300万画素)し、そこから超解像をかけている印象だ。この“甘さ”や、小さな文字の“変質”がどうしても気になり、望遠カメラに切り替わる75mmばかり使っていた。こちらの方がクリーンな写りをする。 最新のiPhoneでは、広角カメラに4800万画素のセンサーを使い、4800万画素とビニング処理した1200万画素を統合し、2400万画素を作り出している。2倍ズームは、フル画素からクロップ(4800万画素→1200万画素)させることで実現しており、1画素あたりの性能は落ちるが、解像度を補間する際の甘さや文字のにじみといった“ミス”が起きにくく、他のカメラユニットに近い解像感を実現している。14 Ultraもこの方向性で2倍ズームできたらな……と思えて仕方ない。 また、これは14 Ultraだけの話ではなくスマホのカメラ全般にいえることだが、「よく写るけど本家カメラとは別物だなぁ……」と痛感する場面が何度かあった。スマホのカメラは本家カメラが持つ特性をユースケースごとに切り出して機能化している、いわば「カメラシミュレーター」のようなもの。本家カメラならできることがスマホではできない……がままある。 例えば、14 Ultraにはポートレートモードに似た、Leicaレンズを再現する「マスターレンズシステム」というモードがある。以下の作例は夜の公衆電話を撮影したものだが、背後を走る車のヘッドライトが玉ボケとして綺麗に映り込んでいる。そこで「ライトの軌跡を残したいな」と、シャッタースピードを遅くしようとしても、そもそも設定項目がない。じゃあ、マニュアル設定できるプロモードでシャッタースピードを設定したとして、今度はボケをシミュレートする機能ではないため、センサーとレンズ本来の画しか出てこない。 ただ、こういう不満が出てくるのも、本家カメラに迫る写りができるようになったからで、人間の欲深さの表れかもしれない。もし今後、センサーサイズやレンズの焦点距離とF値、シャッタースピードなどの関係性を完璧にシミュレートできる、真の意味でのカメラシミュレーターがスマホで実現すれば、一層「カメラはスマホで十分」の世界になるだろう。 その他、電源管理がお粗末でバッテリーの消費が早かったり、グリップを装着したまま充電しても本体は満充電、グリップは空のまま……ということも何度かあった。ただ、この辺はアップデートが入ったようで、持ちが大幅に改善したという声もある。あと、本体が大きく重いこと、FeliCa非対応でSuicaやiD/QUICPayなどが使えないこと(クレジットカードのタッチ決済は利用可能)などは、人によっては外せないポイントだろう。