92歳の谷川俊太郎がいま、思っている『生きてるってどういうこと?』の答え…黒柳徹子が絶賛した
不安な世の中で、毎日の仕事や生活に疲れている私たちが、改めて問い直したい命への想い。そんななか、「生きる力」や「幸福」をうたい、生きる喜びを味わえるアート名言集が刊行され、発売後即重版をして話題になっている。 【写真】『生きてるってどういうこと?』イラストのパンダがかわいすぎる ことばを寄せたのは、詩人であり、『マザー・グースのうた』、スヌーピー・シリーズ『ピーナッツ』の翻訳でも知られる谷川俊太郎さん。動物や植物を美しく精緻に描いたのは、イラストレーターの宮内ヨシオさん。二人のコラボレーションが、見る人に安らぎと希望を与える本を生み出した。 そこで、92歳の谷川俊太郎さんに、『生きてるってどういうこと? 』で綴られた珠玉のことばの重みと、命の輝きについて<92歳の谷川俊太郎が、ここにきて思う「戦争」「絶望」「諦めた」こと…今や「何でもありだ」と思うようになっています>に引き続き伺った。
自然が創作の原動力
谷川さんは、北軽井沢の別荘で過ごしつつ自然と親しんでいた。四季の移ろいにふれることは、詩にも影響するという。 谷川:自然が自分の創作の原動力になっています。言語の世界というのは、一種人工的でしょう。だから、どうしてもその言葉の世界のもとにある芸術にふれたくなる。それが究極的には自然なのです。それで東京にいるだけではなくて、ときどき自然のなかに出たくなったりしましたね。 谷川さんの詩のなかに、「ほんとうの宝は四季のめぐりの自然にまぎれている」ということばがある。 谷川:日本のアートの伝統のなかで、季節感というのはすごく大事ですよね。 * ほんとうの宝は 日々の暮らしの中にひそむ 四季のめぐりの自然にまぎれている 湖の水の源から海までの流れに沿って どんな気持ちが生まれるだろうか どんな宝が見つかるだろうか ほんとうの宝(子どもの環境・経済教育研究室)より
違うジャンルの人と仕事することがエネルギーになる
詩人を本業としつつ、『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞を受賞、スヌーピー・シリーズ『ピーナッツ』やレオ・レオニの『スイミー』『じぶんだけの いろ』、マーカス・フィスター『にじいろのさかな』をはじめとする絵本の翻訳。 絵本『ことばあそびうた』の詩、画家クレーの絵に短詩をつけた詩画集『クレーの天使』、市川崑監督の記録映画『東京オリンピック』(1965年)の脚本、「♪空をこえて、ラララ、星のかなた…」でおなじみのテレビアニメ『鉄腕アトム』や、テレビドラマ『俺たちの朝』の主題歌の作詞など、誰もが心に残る膨大な作品群を生み出している。 そして今なお、新しいチャレンジを続けているのだ。その原動力はいったいどこにあるのだろう。 谷川:僕は大学にも行ってないし、手に職もないし、とにかく食っていかなきゃいけなかったから、若いころから来る仕事で自分ができそうなことは全部受けていたんです。 例えば歌の歌詞を書くとか、誰かのイラストにことばを書くとか、他のジャンルの人との仕事をたくさんやってきました。一人でやるのではなく、いろいろな人と仕事をするということが、自分のエネルギーになっていたんですね。 他のジャンルの人と仕事をするのは、楽しくもあるし発見もある。違うジャンルの作品を見せてもらうと、自分のなかの何かが湧いてくることがある。そうしているうちに、自分も成長するんです。他の人のおかげで今までやってきた、という気持ちがすごくありますね。 谷川さんの詩のなかに、自分を見つめつつ「生きる」ことにふれたものがある。宮内ヨシオさんのりんごときつねの絵に合わせた詩だ。 * 生きているってこういうことなんだ さびしい自分 不安な自分 でも何かを待ってる自分 もどかしい自分 そういう自分をみつめる自分 もどかしい自分『子どもたちの遺言』(佼成出版社)より * 谷川:僕はりんごが好きなんですよ。りんごって、アダムとイヴの昔から、何となく僕にとっては大事な果物みたいなところがあってね。 この絵は、りんごと動物が統合しているような、秘めやかななかにいるような、それの組み合わせがかわいいもんだから、好きな絵ですね。赤い色って、エネルギーがありますよね。