増える個人債務、三重苦で初の所得超え-インフレ・金利上昇・低賃金
OECDのデータによれば、23年の日本の平均賃金は4万6792ドル(約720万円)で、米国の8万115ドルを大きく下回る。
金融庁が10月に公表した多重債務者の状況に関する報告書によると、23年に7万人以上が自己破産を申請した。信和法律事務所の木本茂樹弁護士は、10月までの裁判所のデータから、今年の申請件数は8万件に迫る可能性があるとみている。
日銀も10月の金融システムリポートで家計債務の増加に触れ、若年層の持ち家比率が上昇しているとして金利負担の影響を受けやすくなると警鐘を鳴らした。
金融庁の報告書によれば、23年は多重債務が原因とみられる自殺者数が792人に上った。これは政府が消費者金融を取り締まり、数千に及ぶ貸金業者が廃業した後の12年以来の多さだ。
貸金業協会の9月までのデータによると、24年は消費者金融が前年同月比で毎月8%以上増加した。この水準の伸び率が連続したことは、08年に集計を開始して以降なかった。
大手貸金業者4社の一つであるSMBCコンシューマーファイナンス広報担当の森川芳匡氏は、コロナ後の消費が借り入れを後押ししており、 動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」などソーシャルメディア上の広告で20代からの需要が高まっていると述べた。
Z世代
日本では借金に対する社会的偏見が諸外国と比べて強いとされる。家計貯蓄は9月末の時点で約1100兆円に上り、債務増加に対する緩衝材となる可能性がある。しかし、若い世代の貯蓄は高齢世帯よりもはるかに少ない。
22年に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、潜在的な借り手は増えた。世帯主が29歳以下の世帯の負債額は23年に992万円に達し、10年前のほぼ3倍に拡大している。
金融庁の担当者は、所得基盤が整っていない若年層が貸金業者から無計画にお金を借りて延滞に陥ったり、将来不安からお金にまつわるトラブルに巻き込まれたりすることのないよう、注意喚起をしていると、同庁の方針により匿名で話した。