増える個人債務、三重苦で初の所得超え-インフレ・金利上昇・低賃金
(ブルームバーグ): 生活費の高騰に日本銀行の利上げを受けた金利上昇が追い打ちをかけ、日本で個人債務を巡る状況が深刻化しつつある。
政府の統計によると、家計債務は2023年に平均655万円(2人以上世帯)と、所得を初めて上回った。消費者ローンが16年間で最も速いペースで増えており、金融当局は超低金利に慣れた人々が債務返済で問題を抱える可能性に神経をとがらせている。
負債の拡大は日本に限ったことではない。だが、給与が主要7カ国(G7)の最低水準にとどまる中、多額の負債を抱える人々にとって状況は厳しさを増している。弁護士らによると、個人の破産件数は今年、12年以来の高水準に達する可能性があり、多重債務が原因とみられる自殺者数も増加している。
東京在住で医療関係の仕事に就く60代前半の女性は、10社以上の銀行やクレジットカード会社から約1100万円を借りた後、23年に自己破産を申請した。
学費や生活費のために融資を受けたというこの女性は、借り入れは簡単にでき、貸してくれる業者はたくさんあると話す。借金が膨らんだ結果、返済のために別の業者から借り入れを繰り返す状況に陥ったと言う。
金融庁によると、貸金業の貸付残高の大半に14%から16%の金利が付いている。女性は一部で18%の金利を支払っていたという。
個人債務の急増は、日本が数十年にわたるデフレと経済停滞から脱却する過程で微妙なバランス感覚が求められることを浮き彫りにしている。人々は将来により自信を持ち、住宅購入を含む支出のためローンを組むようになっているが、中には物価上昇のあおりを受けて借金を迫られるケースもある。
経済協力開発機構(OECD)の最新統計によると、日本の家計債務は22年に平均可処分所得の122%と過去最高を記録した。過去10年でこの比率が低下してきた米国や英国とは対照的だ。
賃金格差
第一生命経済研究所経済調査部の星野卓也主席エコノミストは、賃金が低い水準にとどまる企業は「物価の上昇についていけない」と話す。金利上昇は家計を圧迫する可能性が高く、特に変動金利の住宅ローンでその傾向が強いと指摘する。