グローバル経済はまだまだ続くのか? 世界を直接、支配をせず「秩序」を作ったアメリカが、変貌する可能性はあるのか?
「世界の終わり」の地政学 #1
不穏な兆しが漂うグローバル経済。それは一時の変調なのか。いや、そうではない。米国が主導してきた「秩序」、すなわちグローバル化した「世界」の終わりなのだ。そのように主張する『「世界の終わり」の地政学 野蛮化する経済の悲劇を読む』より一部抜粋、再構成してお届けする。 【画像】アメリカが第二次世界大戦後に世界支配しなかったワケ… ここでは、第二次世界大戦が終わり、唯一の戦勝国となったアメリカが、世界支配ではなく、グローバル化という「秩序」をもたらす道を選んだ理由を分析する。
第二次世界大戦後にアメリカが同盟国にもちかけた取引とは?
アメリカが真に本領を発揮したのは、第二次世界大戦が始まってからである。3年に及ぶ猛烈な軍事動員を経てアメリカは、史上最強の遠征能力を持つ国となったばかりか(複数の作戦区域で、統合された大規模な軍事行動を同時に展開することができた)、終戦時にはすべての敗戦国を占領した唯一の参戦国となった。 それだけではない。ローマ、ベルリン、東京へと進軍する間に、3つの大陸と2つの海盆における経済、人口、物流の重要拠点を掌握した。また、他国への武器貸与や陸海空軍共同の直接攻撃により、西半球[南北アメリカ大陸]と東半球[ユーラシア・アフリカ大陸]の間にある重要な攻撃拠点をすべて確保した。 戦時中の巨大な海軍力も相まって、アメリカは知らぬ間にヨーロッパやアジア、金融や農業、工業や貿易、文化や軍事の問題を決定づける存在となった。 ある大国が、新たなローマ帝国として世界を支配する歴史的瞬間があったとすれば、このときが、まさにその瞬間だった。新しい帝国の候補を募るべき正当な理由もあった。ドイツで砲火が止んだ直後から生じた、核をめぐるソ連との競争である。 だが、そんな世界支配は起きなかった。 その代わりにアメリカは、戦時中の同盟国に対して、ある取引をもちかけた。アメリカは自国の海軍(戦争を生き延びた唯一の大規模な海軍)を使い、世界中の海洋を監視し、あらゆる交易を保護しよう。 またアメリカは、自国の市場(戦争を生き延びた唯一の大規模な市場)を同盟国に開放し、あらゆる国がアメリカへの輸出で富を取り戻せるようにしよう。アメリカがこの戦略であらゆる国を包み込めば、その仲間は2度と他国からの侵略を心配する必要がなくなるだろう、と。 ただ、そこには1つだけ問題があった。アメリカは冷戦を引き起こそうとしており、各国はどちらかの側につかなければならない。安全を確保し、富を増やし、好きなように経済や文化を発展させたければ、アメリカを支持し、ソ連からアメリカを守らなければならない。 つまりアメリカは、世界規模の帝国を築く代わりに、賄賂を贈って同盟を結び、ソ連を封じ込めようとした。この協定は、ブレトンウッズと呼ばれる。ノルマンディ侵攻直後にアメリカがこの取引を初めて提案したニューハンプシャー州のスキーリゾート地にちなんだ名称だ。 こうして、第二次世界大戦後の自由貿易時代が生まれた。要するに、グローバル化の時代である。
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