リユース市場活況も「大黒屋」ひとり負けの謎…インバウンドの「爆買い」で急成長も今や“崖っぷち”3つのワケ
中国での急拡大という夢を捨てきれず…
大黒屋は中国人観光客の「爆買い」で急成長した。 「爆買い」が流行語大賞になったのが2015年。その年、大黒屋単体における2015年3月期の外国人観光客向けの販売は前期比3.6%増の90億円となって過去最高を記録した。 インバウンドの売上高が、全体の半分以上を占めるようになっていた。 2014年は消費税が引き上げられたにも関わらず、通期で6%程度の減収で済んだのは中国人の凄まじいまでの消費意欲に支えられてのものだった。 2015年12月、アジアグロースキャピタル(現在の大黒屋ホールディングス)が中国最大の国営コングロマリットであるCITICグループの連結子会社と業務提携を締結。 アジア圏でのシェア拡大を目的として、合弁会社を設立すると発表し、中国攻略への足掛かりを作ったのだ。 1年後に大黒屋をモデルとした中古ブランド品の買取・販売を行う1号店を出店するなど、勢いに乗っていた時期である。 しかし、コロナ禍で計画は大きく狂ってしまう。 2021年3月期は3割近い減収となったうえ、2021年3月に中国の合弁会社を清算する憂き目に遭い、中国でも日本と同様の消費活動の制限を受けるなど、大黒屋を取り巻く環境は大きく変化していた。 それでも大黒屋は、中国へのこだわりを捨てることができず、合弁会社を清算したのと同時に上海に100%子会社を設立したのだ。 中国人が日本に渡航できないのであれば、さらに国内の中古ブランド品購入ニーズが高まると予想したのである。 2021年6月に「5カ年事業計画(2022年3月期から2026年3月期)」を発表。中国現地小売売上を2025年3月期に205億円まで引き上げる驚きの計画をぶち上げた。 2021年12月、アリババグループの「盒馬鮮生(ファーマーションシェン)」内に買取店「大黒屋高青路店」を出店するなど、目標達成に向けた歩みを始めた。 しかし、この計画は絵に描いた餅で終わったことは、足元の業績がはっきりと示している。 景気低迷が鮮明な中国では、高級品を安く手に入れたいというニーズが膨らんでいるため、ブランド品の中古市場が活況だ。 大黒屋の目論見自体は正しかったのだが、シェアを高めることができなかった。 2022年3月期以降は、資金繰りの悪化と十分な在庫を確保できないという深刻な状況が鮮明になっていた。それにも関わらず、中国での拡大を目指すというチグハグな経営が目立つようになっていたのである。