「孤立する人がいない、あらゆる人に居場所と出番がある」福岡県北九州市の注目のまちづくり[FRaU]
心地良く暮らすためには、自分のまちを自ら住みやすく変えていくのも一つの手。周囲を巻き込みながら率先してまちへ働きかけ、新たな地域づくりをはじめている人を訪ねました。今回注目したのは、「誰ひとり取り残さない」ことを目指し、福岡県北九州市で進む「希望のまちプロジェクト」。社会的なつながりが失われつつある今、誰もが助け、助けられるのが当然なまちのあり方とは?
困っている人も、困っていない人も。 みんなが集い、助けあえるまちを
今進められている日本のまちづくりにおいて目が離せないプロジェクトのひとつが、福岡県北九州市の「希望のまち」だ。目指すのは孤立する人がおらず、誰もが「助けて」と言えるまち。あらゆる人に居場所と出番がある。ひとりとして取り残されないまちだ。
発案者は北九州市で35年間、生活困窮者支援を行う認定NPO法人抱樸の理事長を務める奥田知志さん。1988年に北九州越冬実行委員会として、野宿する人に弁当を配布する活動を開始して以来、ホームレスの自立支援を中心とした活動を展開してきた。2014年に名称をNPO法人抱樸に変更し、現在は高齢者福祉や子どもたちへの学習支援、障がいや難病を抱えた人が共同生活を送るグループホームの運営など27の事業を展開。包括的な支援を実践している。
奥田さんが北九州市とタッグを組んで作ろうとしている「希望のまち」の第一歩は、市内に様々な機能を持つ複合型社会福祉施設を建設すること。誰でも利用できるカフェレストランやコワーキングスペースなどの設置に加え、困窮世帯の子どもが学習支援を受けられるスペースを設けたり、支援員が家庭全体の課題を見つけられる仕組みも作る。様々な問題に直面する人が緊急避難できるシェルターや「よろず相談所」、そして「希望のまち」の土台ともなる救護施設も同じ施設内にある。困窮状態で仕事や家を持てない人、障がいのある人、介護を必要とする人、あらゆる困難を抱える人が安心して過ごせる場所だ。 今困っている人もまだ困っていない人も、みんなが交わることで自然と助け合いが生まれる場。それこそが奥田さんが目指す「あるべきまち」の姿。この施設を拠点に、まち全体がそんな場になれたら――それが願いだ。