「飲食店はほぼない」「でも池袋駅までわずか数分」…。練馬・板橋にまたがる街・小竹向原は、子どもにも学生にも優しい“住むとちょっといい街”だ
田畑土地㈱に続き、ここもアポなしの訪問だ。お手隙のタイミングを見計らって、声をかけてみると、スタッフの朝倉千佐子さんが、快くインタビューに応じてくれた。 「ここは、2011年にオープンですから、今年で14年目です。お客さんは、近隣の方々、常連さんが多いですね。子育て中のお母さんがお子さんを連れてくることもあるし、ご年配の方まで、年齢層は様々です」(朝倉さん) せっかくだから街の魅力についても聞いてみた。
「静かで住み心地がいいから、長く暮らしている方が多い印象です。うちのお店も、そういう人たちに支えられている感じです。あと、このへんは、武蔵野音楽大学が近いから、音出しOKの賃貸物件が多い。 だから、学生さんだけじゃなくて、プロのバイオリニストの方なんかも住んでいます。音楽や芸術などに理解のある街、というのもここの魅力かもしれません」(朝倉さん) ■街にはピアノの演奏が流れている 同様のことを田畑土地㈱の木村さんも話していた。
「少し歩いて江古田まで行けば日本大学芸術学部があるから、街中で課題のための動画撮影なんかをやっている学生もたくさんいます。街全体が音楽とか芸術に関して寛容なんですよね」(木村さん) たしかに、武蔵野音楽大学の近くまで行くと、どこからともなくピアノの音が聞こえてきた。 「単に僕の印象ですが」と前置きして木村さんはこう語る。 「この街、とくに駅の南側の小竹町界隈は、大通りから一歩入ると、信号が極端に少ないんですよ。それでも安心して子どもたちが歩けるよう、街ぐるみで安全の見守り活動などをしています。古い街で、長く住んでいる方も多いから、住民同士の繋がりも深い。
学生街でもあるのですが、学校を卒業していったん別の場所に住んだ方が、家族を連れて戻って来る例も少なくありません」(木村さん) ■都内屈指の”隠れ家”的な街、それが小竹向原 インタビューの最後に、ポロリと出た木村さんのこんな言葉が印象的だった。 「発展してもらいたいという気持ちはもちろんあるんですけど、その一方で、このまま”隠れ家的な街”であってほしいという思いもありますね」 ひっそりとした住宅街だけれど、少し足を延ばせばレジャーの選択肢も豊富な小竹向原。動と静をしっかり分けた暮らしを楽しみたい人にはおすすめの街だ。
【本文中で紹介できなかった画像も多数!】“住むとちょっといい街”な、小竹向原 商店街や銭湯、路線図…などを見る
末並 俊司 :ライター