「民間」の地域振興、税金に頼らず成果 農地を転用したホテル開発、利益で農業改革も
地域の魅力を引き出し、活力を取り戻すために重要な地域活性化。その活動を担うのは、自治体をイメージしがちだが、民間の取り組みも積極的だ。まちビジネス事業家の木下斉さんに注目の人を聞いた。AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。 まちビジネス事業家の木下斉さんが選ぶ2025年注目の10人はこちら * * * 新幹線と飛行機の交通網は充実しても、それらを降りた先の2次、3次交通が発達していないので、車を運転しない地元の人や観光客に不便な場所は地方に多くあります。1時間に1本の路線バスを維持するために、自治体が2千万円もの補助金を投入するけれど、もう限界。そんなケースが多々あるなか、「ミーツ」の成田智哉さんは北海道厚真町で、スマホで車を呼び出せる交通サービスを開発しました。東大卒、トヨタ勤務とエリート街道を歩いてきたのですが、スタートアップを立ち上げて新しい公共交通を作っている。今ではコミュニティーの中核になっています。 「スイデンテラス」という山形・庄内地域のホテルをご存じですか。「SHONAI」の山中大介さんが、三井不動産で地方の商業施設を作っていた経験を生かし、農地を転用して開発したホテルです。その利益をもとに、冬場に外で遊べない子どもたちのための全天候型遊具施設を作ったり、アイガモロボットによる効率的な米作りのための農業改革をしたりしています。地域のポテンシャルを見いだしている好例です。 能登半島地震の復興地域である石川県七尾市に「一本杉 川嶋」という日本料理店があります。北前船の交易で栄えた一本杉通りという商店街にあって、2020年に開店し、1年足らずでミシュランガイドの星を獲得した店です。もともと店主の川嶋亨さんは、一本杉通りを活気づけたいという思いで開業。店内では商店街の和ろうそくを使って雰囲気を作り、地元の作家さんの皿、地元の食材も使っていました。これこそ地域振興です。被災してまだ休業中ですが、川嶋さんはまた再開できるように頑張っています。