「民間」の地域振興、税金に頼らず成果 農地を転用したホテル開発、利益で農業改革も
お風呂もなかった公営住宅を、民間資金を入れて魅力的なまちに変える「morinekiプロジェクト」が、大阪府大東市にあります。プロジェクトを動かす「コーミン」の入江智子さんは、大東市の元職員です。行政は入札や公募で安い事業者に事業を任せますが、住む人にとってプラスになるのか疑問に思っていたそうです。地域の人に必要なものを考えた結果、デザイン性の高い施設に再整備することにしました。カフェレストラン、オフィスも入居し、住む人が自慢できる街になりました。 熊本・天草諸島の入り口、上天草市では、「シークルーズ」の瀬崎公介さんが定期航路を就航して観光路線に振り切ったところ、上天草に観光客が押し寄せるようになりました。商業施設やホテルが立て続けにできましたが、建てたのは外部資本ではなく、地元の人たち。地元の人による投資は、60億円以上にも上りました。役所は廃業した国民宿舎を解体除去するところまで行いましたが、補助金はゼロ。補助金が出ていたら、運賃を下げるように求められ、採算が合わず、もっと補助金が必要になる悪循環に陥っていたでしょう。地元の人が投資し、行政ができることをして、賑わいの連鎖を創り出したのです。 地方振興といえば、行政の予算で行う事業だと思われがちです。ですが、必ずしも国の成功事例集には載っていない、税金に頼り切らない民間の取り組みが各地で成果を上げています。 (構成/編集部・井上有紀子) ※AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号
井上有紀子