「デロリアン」を本当にゴミで走らせた! 未来を実現した人はどんな人?
THE PAGE
1985年から1990年に公開されたSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(以下、BTTF)」シリーズで大活躍したのは、ゴミをエネルギー源とする自動車型タイムマシン「デロリアン」だった。1作目の公開から30年もたった今日、まさか本当にゴミでデロリアンを走らせようとする人が現れようとは。なぜ、そこまでこだわるのか。動機を、というよりどんな人なのか知りたくて、日本環境設計の岩元美智彦社長をたずねたところ、思いもよらない話を聞かされることになったのである。 「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の未来技術、どれだけ実現した?
大学時代に観た「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に衝撃
デロリアン走行イベントが行われた東京・お台場。少し赤い陽光の中、BTTFパート2で主人公がタイムスリップした2015年10月21日16時29分が近づくと、カウントダウンがはじまる。『3、2、1、ゼロ!』という声とともに、走り出すデロリアン。それを見送りつつ、岩元社長はやや上ずり気味に「いやー、涙がちょちょ切れますねえ」と話した。 岩元氏とBTTFとの出会いは大学時代の1985年暮れ、彼女と入った北九州市内の映画館でのこと。映画のラストで、2015年の未来から帰ってきた科学者のドクが、バナナの皮や缶飲料の残り、缶そのものをデロリアンに補給しているシーンを観て、「将来、ゴミで自動車が動く時代がくるんだ、と思いました」。 映画が描き出す未来の世界に驚き、あこがれた経験を持つ人は少なくはないはずだ。その思いはほとんどの場合、映画を見た思い出の1シーンとして記憶の中に埋もれていく。
記憶の中に埋もれさせない
しかし岩元氏の場合、それでは終わらなかった。 卒業後に勤めた繊維商社では、ペットボトルから作った再生繊維の営業を担当。知識が深まるにつれ、衣料品のリサイクルがほとんど手つかずの状態であることに気付かされる。年間200万トンの繊維製品ゴミのほとんどが、焼却もしくは埋め立てられていた。 どうにかしたい、という思いは、やがて独立への道へとつながっていく。 いつまで経っても、BTTFが描いてみせた自動車がゴミで動く時代はこなかった。ならば自らの手で、という思いもあった。 現専務の高尾正樹氏と出会ったのは、異業種交流会でのこと。当時、高尾氏は大阪大学 先端科学イノベーションセンターの特任助手として、バイオエタノールの研究に携わっていた。 ある日のこと。居酒屋でビールを飲みながら、「トウモロコシからバイオエタノールが作れるのなら、綿からも作れるのではないか」との考えを高尾氏に話す岩元氏。繊維製品の材料中、綿は約40%を占めるという。「いわば、エタノールを飲みながら、エタノールを作ろうという話をしていたわけなんです」と笑いながら振り返る岩元氏。 「変なこというおっちゃんだなあ」と、岩元氏より16歳年下の高尾氏は、その時思ったという。それでも、「面白そうな話ですし、できるかもしれんと思ったので、ノリで『やれるんちゃいますかね』と応えたんです」。 2007年1月、岩元氏は日本環境設計を設立し、社長に就任。高尾氏も加わり、岩元氏の構想を専務として実務面で支えていくことになる。