「デロリアン」を本当にゴミで走らせた! 未来を実現した人はどんな人?
リサイクル技術を生かす仕組みづくりが必要
創業の目的の一つは、『循環型社会を作る』こと。会社設立後、その実現に向けてリサイクル技術の開発とともに取り組んだのは、リサイクルの仕組みづくりだった。 「リサイクル技術だけで循環型社会はできません。その技術を生かす仕組みづくりが必要で、それができて初めて循環型社会へのスタートに立てるんです」(岩元氏)。 経済産業省から補助を受け、小売り各社を通じて消費者の意識調査などを実施。その結果、「人々は衣類をリサイクルしたがっていることがわかったのです」と振り返る岩元氏。生ゴミと一緒に捨てたくないゴミの第1位が衣類であること、リサイクル時には購入した店舗での回収を希望する声が多いことなどが明らかになった。 2010年には、繊維製品のリサイクルに取り組む『FUKU-FUKU プロジェクト』を開始。このプロジェクトは、参画する小売り各社で衣類を回収し、日本環境設計がバイオエタノールなどにリサイクルする仕組みとなっている。 綿のリサイクルは、(1)綿を酵素の力でブドウ糖に分解、(2)ブドウ糖を発酵させてバイオエタノールをつくり出す、というのが大まかな流れ。綿以外の繊維もコークスなどにリサイクルしている。 「循環型社会を作るために必要なのは、“リサイクル技術”と“消費者参加型”、そして“エンターテインメント”を加えた『リサイクルのトライアングル』です」と、岩元氏は力を込める。 創業のもう一つの目的は、デロリアンを走らせることだった。岩元氏らは、循環型社会を象徴するイベントとして、『衣類から作ったバイオエタノールでデロリアンを走らせる』というプロジェクトを企画する。デロリアンに、トライアングルの“エンターテインメント”の役割を担わせたわけだった。 本番前に全国各地で開催したイベントでは、デロリアンへの乗車体験コーナーに長蛇の列ができたほか、デロリアンを走らせる燃料の元となる繊維製品の回収も実施。『自分たちの不要な衣類で、デロリアンを走らせることができる』という仕掛けが楽しさにつながったのだろうか、各会場では多数の繊維製品を回収することができたという。 「『地球が危ない』などと恐怖心に働きかけるのではなく、『楽しい・ワクワク・ドキドキ』を演出することが必要なんです」(岩元氏)。国内メディアだけではなく、英BBCや米CNN、仏AFP通信といった海外メディアもこのプロジェクトに注目、取材に訪れた。 そして、10月21日の16時29分。観客とメディアが見つめるなかで、デロリアンは走りはじめた。岩元氏の念願がかなった瞬間だった。