“指導者”中村俊輔の覚悟。サッカー以外でも道しるべとなる人間力を磨く「その人の人生で必ずいる。その中のひとりになりたい」
「勝つための監督」とはまた違った角度で描く理想像
2022年に現役を引退し、指導者の道に進んだ中村俊輔。横浜FCでコーチ2年目を迎える今季は、J1復帰を目ざすチームを支えながら、S級ライセンスの取得にも励む。 【画像】「伝説のFK弾」も!中村俊輔のキャリアを厳選フォトで振り返る 1997~2022 かつてプレーヤーとして共闘した盟友たちも続々と指導者になり、現場に立っている。そうした存在は俊輔にとっても刺激になっているのではないか。 「プレーヤーの時とあんまり変わらないね。違う選手から良いところを盗んでとか、どういうふうにプレーしているのかなとか。それが、どういう指導しているのかな、みたいな。でも簡単に聞けるわけじゃないし。俺の指導歴は浅いわけだから、何かを盗みたい、吸収したい気持ちある」 選手時代と変わらぬ探求心。S級コーチ養成講習会でも貪欲に学ぼうとしている。 「相馬(直樹)さんがインストラクターだから、サイドバックのクロスに対する守備の優先順位はどうなのかとか、普通に聞く。奥野(僚右)さんはセンターバックだったから、センターバックの人がサイドバックに要求したいことは何かとか。守備の仕方だけじゃなくて、そういう細かいところを聞いたりできる」 ディテールに徹底的にこだわる。元日本代表の10番は、まだまだサッカーを突き詰めようとしている。なぜなら「勝つための監督にならなければいけない」からだ。 それと同時に、また違った角度から理想像を描いている。 「選手が“学べる”ような指導者になりたい。自分にもそういう人が何人かいた。いろんなこと、サッカーもそうだし、人として、みたいな。その両方だね。今は監督にというよりも指導者。そのへんの奥深さをまだ分かっていないし。 だって、20人、30人を束ねるわけじゃん。それで一つの方向に向かっていかせる。クラブもそうだし、スタッフもそう。そういうところの人間力みたいなものをつけていかなければいけないから」 ここで、一緒に囲み取材をしていた記者に俊輔が逆質問。「そういう人、いる? パッと思い浮かぶ人」。学生時代に野球に打ち込んでいたというその記者が高校の監督を挙げると、「でしょ。必ずいるんだよ」と俊輔も納得する。 「たとえば、あの先生は超怖かったけど、学ぶことはあったとか。その人の人生で、そういう人は必ずいると思うし、その中のひとりになりたいなっていうのはある」 選手との関係性で、サッカーはもちろん、サッカー以外でも良い影響を与えられる指導者になれれば――。 「その人がいるかいないかで、人生もちょっと変わる。俺にも何人かいたよ。監督さんもそうだし、小学校や中学校の先生もそう。指導者として今の自分は、選手の人生に関われるかもしれない。だから、それなりの準備というか、人間力や指導力をつけなければいけない」 “指導者”中村俊輔の覚悟とは、そういうことだ。 取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)
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