「ぼろぼろになって一人で死んだ」…昭和の伝説的ストリッパー「一条さゆり」の残酷すぎる「人生の幕切れ」
芸人人生の終幕
その意味で一条の「死」はまさに芸人人生の終幕だった。 彼女は20歳を前に踊りの世界に入り、30代で引退している。芸歴は長くない。トップに君臨していた時期は5年ほどである。 ただ、引退公演での逮捕、懲役、出所後の飲食店経営とレコードデビュー、交通事故、大やけど、そして晩年の極貧生活と1人きりでの旅立ち。「引退後」の波乱に満ちた生き方こそ彼女の舞台だった。 「あの生き方で一条さんは誰にも真似できない境地を開いた。だから、一条さゆりには2代目も3代目もないんです。彼女の色気、艶、経験、苦労の生い立ち、恥ずかしい部分、生まれてから引きずってきたものすべてが、彼女の舞台を作っていた。それを作り上げた女性に普通の生活を求めても、それは無理や。一条さんの生きた時間が唯一無二の舞台を作ったんやから」 どこにでもいるような人間に対し、数百人が息を殺して注目し、最後にはため息をつき、手を合わせて拝むはずがない。実生活では味わえない芸だからこそ、客は高いカネを払い、貴重な時間を費やした。一条の孤独な旅立ちこそ、伝説の踊り子らしい最後だった。 『男たちを“興奮”させ続けた彼女がついに「あの世」へ…「南溟寺の住職」が「伝説の踊り子・一条さゆり」に付けた意外な「法名」とは』へ続く
小倉 孝保(ノンフィクション作家)