セアカゴケグモの移動法ほか、クモの外来種の裏話(奥村賢一/クモ研究者)
実際に民家車庫内で繁殖しているのも確認したが、こうした場所はクモ以外の生物も含め在来種が生息するのに必要な環境とは言い難い。さらに自治体から依頼を受けたセアカゴケグモの調査の際に側溝の蓋を外すと、裏側からセアカゴケグモとともに発見したことがある(図5)。 本種は国内においては在来種との競合が生じやすい自然環境ではなく、逆に在来種からの影響を受け難い人為環境に依存しているといった状況である。セアカゴケグモと同じ場所に生息した場合はもしかすると相手の増加を抑える貢献までしているかもしれない(あくまで願望的な推測)。 先に挙げたグラバーヤチグモでも分かるように、外来種が全て悪者であるとは限らないといった事例がクモ類では複数種で存在する。 【奥村 賢一(おくむら けんいち/クモ研究者)】 国立科学博物館動物研究部、陸生無脊椎動物研究グループ所属。主に地面を這うクモを中心に、系統学、分類学、および生物地理学的研究を行っている。 特別展「昆虫 MANIAC」公式ホームページ:http://www.konchuten.jp
文=奥村 賢一