医師と患者の意思疎通カギ ~アトピー性皮膚炎、治療満足度上げる~
アトピー性皮膚炎はまれな病気ではない。強いかゆみを伴う発疹が現れ、かゆくて夜も眠れないなど生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼす。新規治療薬の登場で患者の治療満足度は高まっているが、まだ十分とは言えない。課題の一つが医師と患者の意思疎通だ。九州大学大学院の中原剛士教授(皮膚科学分野)は「通院を先送りにせず、困り事について医師と積極的にコミュニケーションを取ってほしい。それが最適な治療の選択肢につながる」と話す。
◇年齢により症状に特徴
日本アレルギー学会のガイドラインによると、有症率は3歳をピークに小学生が高い。小学1年生で約12%、6年生で約11%となっている。ただ、20代で約10%、30代で約8%だ。 アトピー性皮膚炎は以前、小さな子どもの病気と言われていた。最近は、いったん治療がうまくいって症状が治まっても思春期以降に再発したり、思春期以降で成人になってから発症したりすることが分かってきた。 中原教授によれば、年齢によって症状に特徴が見られる。乳児期には口の周りや頬のただれ、首や手足のしわの部分の赤みやかゆみが目立つ。幼少時期では肌の乾燥が強くなり、肘や膝のくぼみに発疹がよく見られる。また、耳の付け根のくぼみにも湿疹が見られ、しばしば、あかぎれのようになる。思春期・成人期では、発疹が下半身よりも上半身でよく見られる。発疹は顔や首、前胸部などに強く出る傾向がある。
◇治療の流れ
アトピー性皮膚炎の治療の流れはこうだ。まず炎症の強さを速やかにしっかりと抑え、症状が消えたり、軽くなったりした状態(寛解)にもっていく。次に寛解を維持した上で、さらに良い状態を目指す。中原教授は、このステップをこう説明する。①塗り薬を適切に使い、しっかりと炎症を抑える②スキンケアと塗り薬を組み合わせ、その状態を維持する③最終的にスキンケアを中心にする―。 「しかし、これがうまくいかないケースもある」と、中原教授は言う。 それは薬の副作用などで使用できる薬が制限されたり、仕事や家事などに追われ、塗り薬を十分に塗布できなかったりする患者も少なくないからだ。