考察『光る君へ』42話「この川でふたり流されてみません?」今度こそ一緒に逝く、でもあなたが生きるなら共に生きる…まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)の「川辺の誓い」
いとの心配にまひろは
家に戻ったまひろに、乳母・いと(信川清順)が双寿丸(伊藤健太郎)と賢子(南沙良)の仲を心配して訴える。 「裳着はお済ましでございますよ。なにが起きても不思議ではありません」 通婚の時代である。傍目には、越後守藤原為時(岸谷五朗)の屋敷の姫君のもとに、武者・双寿丸が夫として通っているように見えなくもない。このうえ更に「事実」までできてしまっては! と、いとは恐れているのだ。それでも母であるまひろは「それならそれで、よいではないの」と笑う。 そうだわ、まひろはこういう女だったわ……「遠くの国に一緒に行くか?」という直秀(毎熊克哉)に「行っちゃおうかな」と答えた子だった。 あの頃の無鉄砲な姫君は、娘に芽生えつつある愛を微笑んで見守る、人生経験豊かなおっかさんになったのである。
左大臣家の屋台骨
道長は病に伏した。『小右記』にはこの年の6月1日からしばらくの間、左大臣・道長の病悩についての記述が続く。左大臣は頭が割れるように痛むとのことで、食事も喉を通らないようだと。 皇太后・彰子が見舞い「私のせいやもしれませぬ」と母である倫子(黒木華)に漏らす。いや、どちらかというと道長の現在の悩みの種は妹の姸子ですよ? と思うが、このように受け取るのが彼女らしい。 「皇太后様は信じた道をお行きなさいませ」と祖母である穆子(むつこ/石野真子)が励ます。この年、穆子81歳。彼女が登場するたびに感じるが、土御門殿の強さは、穆子がどっしりと倫子とその娘たちを支えてきたことによる。后、将来の国母が育った左大臣家の屋台骨だ。 彰子は藤式部(まひろ)にも支えてほしくて、帰ってくるよう手紙で促すが、敦成親王出産後の里帰りと違い、まひろは応じようとはしない。皇太后・彰子はもう大丈夫なはず。自分の役目は終わったのだ……。 左大臣・道長が倒れてから内裏に怪文書が出回った。 「左大臣の病を喜んでいる者。大納言・道綱、大納言・実資、中納言・隆家、参議・懐平(かねひら/実資の兄)、参議・通任(古舘佑太郎/皇后・娍子の弟)」 仰天した道綱は慌てて土御門殿に駆けつけ、直接釈明しようとする。大騒ぎする道綱をつまみださせる倫子の対応が正解。相手の容態がどうであろうと構わず、心配している自分の姿を見せて、言いたいことだけ言いにくる迷惑な見舞客の見本のようだ。よい大人は真似しないでね!
【関連記事】
- 考察『光る君へ』22話 周明(松下洸平)登場!大陸の波打ち寄せる越前での運命的な出会いからの衝撃「日本語喋れるんかい!!」
- 考察『光る君へ』23話 宣孝(佐々木蔵之介)が越前に来た!ウニを匙で割ってご馳走する可愛いまひろ(吉高由里子)に「わしの妻になれ」ドンドコドン!
- 考察『光る君へ』24話 まひろ(吉高由里子)に忘れえぬ人がいても「まるごと引き受ける」宣孝(佐々木蔵之介)の大人の余裕と包容力!
- 考察『光る君へ』25話 まひろ(吉高由里子)を娶ったとわざわざ報告する宣孝(佐々木蔵之介)、動揺を隠せない道長(柄本佑)
- 考察『光る君へ』31話 一条帝(塩野瑛久)の心を射貫くのだ! まひろ(吉高由里子)の頭上から物語が美しく降り注ぐ歴史的瞬間。しかし道長(柄本佑)は困惑気味