飲食店で食事を真上から撮影する手法が若者に人気なわけとは
顔が映らずSNS投稿しやすく
飲食店に用意された頭上の網棚などにスマートフォンを置き、真上から食事中の様子を撮影する手法が若者らに人気となっている。「俯瞰撮影」などとも呼ばれ、専用の撮影台を設ける店も登場した。斬新な構図になるほか、顔が映らないため、動画や画像をSNSに投稿しやすい点が支持されている。 【写真】2024年「今年の一皿」は「うなぎ」に 11月中旬の夜、東京都墨田区の中華料理店「フーフー飯店」。座っていた女性客が次々と立ち上がり、席の上にある網棚にスマホを置き始めた。網の隙間から真下にスマホのレンズを向け、きれいに盛られたラーメンやチャーハンのほか、食事する様子を撮影する。
カウンター席で友人と並んで撮影をしていた都内の女子大学生(19)は食べ終わると動画をチェック。「おしゃれでかわいい。『いただきます』といった所作や料理を分け合う様子も記録できて思い出になる」。テーブル席で撮影した女子高校生(17)は「ピントの調整が難しかったけど面白い。顔が映らないのでSNSに投稿しやすい」と話す。 網棚はもともと、客の荷物置き場として設置された。料理長の西塚隼之介さん(36)によると、今年2月以降、真上から撮影された料理などの動画投稿が相次いだ。撮影目当ての客で行列ができることもある。現在は来店客の3~4割が撮影するという。「そういう使い方もあるのかと驚かされた。料理や店の雰囲気を、斬新な画角の映像で楽しんでもらえたら」と歓迎する。 真上撮影のサービスを5月下旬に始めたのが、仙台市青葉区のパンケーキ店「38kitchen勾当台店」だ。四つあるテーブル席の上に、天井からワイヤでつるして撮影台(45センチ四方)を設置した。木の枠に園芸用ネットが張ってあり、スマホを置ける。 果実などで彩られたパンケーキを味わう動画を友人と撮影した主婦(41)は「スマホを持たずに料理が撮影でき、ゆっくり食事を楽しめる」と満足げだ。
真上撮影には様々な利点がある。隣の客を映すことなくテーブルの様子が収められ、ピントも全体に合わせやすい。店を運営する「ReWiLL」(仙台市)執行役員の星野由加利さんは「テーブル全体の彩りや配置など、雰囲気が伝わる。届いた料理の順番も記録できる点が好評」と話す。客がSNSに投稿することで集客につながり、同店の10月の売り上げは5月の約1・5倍になったという。
手芸品の動画にも活用
同様の撮影手法は手芸品の動画配信などでも活用されている。タイルでアート作品を作るクラフト作家の伊東亜由さんは、真上から撮影するスタンドを自作した。「斜めや横からの撮影より見た目がすっきりする」と魅力を語る。 市販の網をコの字形に組み合わせてフックなどで固定し、好きな高さになるよう調整する。ここにスマホやタブレット端末をのせて、タイルアートなどの作り方の動画を撮影しているという。「自宅でも真上撮影を楽しんでみては」と伊東さんは話している。(読売新聞生活部 岩浅憲史)