【復刻掲載】「"リアル鉄"・石破茂とゆく寝台特急の旅!」2009年の週プレ独占インタビューを再掲載!
■もしJRの社長になれたら、やってみたいことは... 静岡の手前で、取材は一旦中断。しばし大臣が眠りに入る。そして翌朝5時49分、乗り換えのため兵庫県の上郡駅に降り立つ。氷点下近い闇の中、今度は2両編成のディーゼル特急『スーパーいなば91号』がホームに滑り込む。ここから智頭急行、因美線経由で鳥取に向かうのだ。 ――ということで、早朝6時から再び列車内でインタビュー再開。世の中は空前の鉄道ブーム。そんななか、日陰者だった鉄道マニアも急に人気者に。そこで質問。鉄道マニアとしての人生を送ってこられて、モテましたか? 「いかんね、それは。モテようと思って趣味をやるのは邪道ですよ。色気ナシに一心不乱、これが〝趣味〟です」 ――はっ...反省します! では、大臣が鉄道でグッとくるのってどんなシーンですか? 例えば、猛吹雪の中、一両で走るディーゼルカーとか。 「夜行特急が出発する光景かな。今から遠くへ行きますっていう、客船が出帆するような非日常性だよね。最近の新幹線みたいにビジネスそのものだったりすると、グッとこない(苦笑)。新幹線でも昔は『シンデレラ・エクスプレス』のCMとかもあったよね。鉄道にはああいうドラマとロマンが欲しいよね」 ――一方で現在、近代化の極致のリニアモーターカーをJR東海が推進中。 「運輸委員長の時に乗ったけど、あれはもう鉄道じゃなくてほとんど飛行機。あんまり興味がないです。東京~名古屋が30分になる。それがどうしたって感じです。それなら鈍行を乗り継いで名古屋まで行ったほうが楽しいな。私は山陰の単線区間で育ち。エアコンのない鈍行に乗って、特急の通過待ちでホームに降りて景色を眺めたり。そういうのが楽しい思い出なんでね」 ――そこまでおっしゃる本物の鉄道マニアとしては、常に先頭車両に立ってガラス越しに前方を眺めることも...。 「いいね! 今はあまり乗れないけど、東京モノレールでは必ず一番前。あと、高校時代に乗ってた東急東横線でもいつも先頭車両に乗ってたな。あれは何歳になっても楽しいね(笑)」 ――大臣は様々な乗り物がお好きで。では、あえて順番をつけると、一番は? 「断然、夜行特急。それがダントツで、その次は...好きだって言われれば夜行だし、詳しいっていえば軍艦かなあ。その中では断然、海自の護衛艦。なにか相通じるものがありません? 海自に叱られるかもしれないけど、夜行特急と護衛艦はすごくロマンチックなんですよ。平時であればの話だけどね」 ――その乗り物への熱い思いを国民に伝えるためには、ぜひ次は国土交通大臣に就任していただきたいのですが。 「ハハハハ。今は国交省っていうデカイ役所になっちゃったからね。でも、かつての運輸省は、鉄道、船、飛行機、自動車大好き人間の役所でしたから、楽しい役所でしたよね」 ――まさに石破大臣にピッタリ! 「当選4回の時に常任委員長を好きなの選んでいいって言われて、一も二もなく運輸委員長を選びましたね。その半年が国会議員をやってて一番楽しかった。仕事でいろんなモノに乗れたし。昔の運輸大臣が今あったら、図ってでもやりたいたね(苦笑)」 ――ですが昨今、自民党が苦しい状況にあります。そこで野党になったら、国交大臣になれなくなってしまう。 「ハハハハ。確かに多くの自民党の議員が、今、野党になる恐怖にとりつかれてるように見えるよね。けど、野党になることを恐れて政治家なんかやってられるかって思いますよ。それに、野党でいる時こそ、次はこんなことをするぞって考えるいい期間なんです。与党であるに越したことはないし、最大限努力もするけど、与党でいること自体が自己目的じゃないんですよ」 ――では、次回の総選挙はどういった結果になると予想してますか? 万一、石破大臣も落選とか? その時はJRの経営側に転身もありえるかと? 「アハハ、落選しないように全力を尽くします。JRに転身? 趣味を仕事に持ち込むなって叱られちゃうし、そもそも雇ってなんかくれませんって」 ――では、仮にJRの社長に就任なさったら、やってみたいことは。 「客車型の開放型A寝台とB寝台を何とか保存して、年に数回、かつてのダイヤにできるだけ近い形で走らせてみたい! ビジネスとして成立たせるため何倍かの値段を取っても、乗る人は大勢いますよ。少なくとも私は絶対乗るね(笑)。そこまでやれたら幸せです。でも、もう50歳も過ぎたし無理かなあ」 ――となると、JRとは言わずに地元鳥取の鉄道会社などは? 「そうだね~、若桜(わかさ)鉄道とか智頭(ちず)急行の営業担当とかできたらうれしいかもね。もしかしたら大臣や首相をやるより、よっぽど楽しいかもしんないね(そして、窓の外、遠くを眺める)」