進化が加速した生成AI、競争過熱で"AI版ムーアの法則"に限界説も、2025年はどうなる?
どちらに進むのが望ましいか? おそらく、より未来的な[ケース2]が望ましいという声が多いのではないだろうか。 しかし、歴史的にイノベーションは強い意志を持ったリーダーやスタートアップによって推進・実現されてきた。[ケース2]の場合、ユーザー自身が新しい使い方を考え、ユースケースを見つける必要性が生じる。 「A lot of times, people don't know what they want until you show it to them(人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ)」(スティーブ・ジョブズ氏) 例えば、モバイル革命において、AirbnbやUberがスマートフォンを活用したアプリとサービスを構築して成功し、その結果としてシェアリング経済という新しい市場が誕生した。現在のクリエイター経済でも同様の新市場形成が起こっている。こうしたAIを活用するスタートアップによるイノベーションは、[ケース1]の方がより起こりやすい。 ■AIエージェントを巡るAppleとOpenAIの同床異夢 2025年のAI業界のキーワードとして、多くの専門家が「AIエージェント」を挙げている。ユーザーの代わりに、またはユーザーと協力して、特定の目的やタスクを達成するために自律的に行動するAIシステムを指す。現在のLLMの能力は、その将来像から見れば序章に過ぎない。これからLLMに依頼できる範囲が拡大していき、5年後に2024年を振り返った時、「あの頃は質問にしか対応できなかったよね」と苦笑することになりそうだ。 AIエージェント実現のアプローチとして、AppleはiPhoneやMacなど同社の強固なハードウェア基盤を活かし、iOSやmacOSに生成AIを統合するという[ケース1]の利点を活かす戦略を採っている。一方、OpenAIのアプローチは、かつてWEB 2.0時代にGoogleがクラウドサービスによって覇権を確立したのを彷彿させる。[ケース2]による革新を目指しているように見える。 しかし、両社とも克服すべき課題を抱えている。OpenAIには強力なコンシューマ向けプロダクトがなく、AppleはAIの未来をユーザーに納得させるような冒険的なAIモデルを提供できずにいる。そのため現状では、AIの将来について異なるビジョンを持ちながらも、両社は互いの不足を補完し合う協力関係を築いている。