”怖がり保護犬”が動物行動学のプロの家に。3日間の玄関での籠城後に見せた劇的な変化
玄関の靴箱下に顔を突っ込んだまま
極端に怖がりのアロイ。ワタデキの車からおりた瞬間に焦って、走って、藪の中に隠れこみました。家に入れても、玄関の靴箱の下に顔を突っ込んで、出てきません。 仕方がないので、音をたてないようにそっと近づいてシーツにしき、水、えさを置き、放っておくと、そのまま3日間ひきこもっていました。 家族にも協力してもらい、できるだけ物音をたてないよう心掛け、アロイのそばを通るときは、優しく声をかけたり、そっと撫でたりもしました。 ドライフードは全く食べる様子がありません。鶏むね肉やささみを水煮して食べやすく切ったものを、手からあげてみましたが、それもそんなには食べないし、あまり興味も示しません。お腹はすいていても、怖いのと緊張していたので、食べられなかったのでしょう。 時々、水は飲んでいる時に、「お水飲んでるの、えらいね~」と優しく声をかけ続けました。 引きこもりの3日間が過ぎた頃、トイレシートにおしっこを済ませた後のことです。私を見て、軽くしっぽふりました。私たち家族が、嫌なことはしない、というのはわかったようです。 怖いものがたくさんあって、自由にふるまえなくても、本当はさみしいのか、撫でてほしそうなそぶりを見せます。でも私からは近寄らず、「アロイ」と声をかけて、来たら撫でるようにしました。 自分の意思を示す練習です。 また、この時期は一緒に過ごす時間は大事ですが、意識的に離れている時間も必要です。一緒に居過ぎると、今度は依存して、留守番のできない子になってしまうのです。 外に出かける用事がなくても、「行ってきます」と声をかけて、あえて別の部屋に入ってドアを閉め、1日に数時間は別々に過ごすようにしました。
自分の選択に自信をつけさせる
1週間ほどたって、少し慣れたのか、家の中をうろうろするようになりました。相変わらず、物音がすると、慌てて玄関に走って戻りはしますが、リビングのすみっこに落ち着くようになりました。アロイが初めて、自分で「選んだ」場所です。 そこからは玄関と、キッチンにいる私がよく見え、家全体も見渡せるから、安心なのでしょう。自分で「選んだ」スペースに落ち着き、安心感を得る経験は、自分の選択に自信をつけさせるうえで、とても大事なことです。 また、私はうちの犬には一緒に寝ることは許していないのですが、アロイは、あまりに怖がりで、なかなか心を開かない中での「要求」なので、特別に「いいよ」と言うと、お腹のところに丸くなって寝るようになりました。 やっとアロイとの距離が縮んできた気がしました。 これまで、ほぼ未体験だったお散歩は、嫌がっても、抱っこして外に連れ出し、おしっこをさせます。知的な犬は散歩で得る刺激が、生きる喜びにも楽しみにもなります。3歳ならまだまだ十分、散歩を楽しめるようになるはずです。 散歩から戻ったら、「足、きれいにしようね」と声を掛けながら足を拭き、ごはんをあげる。これをルーティンにしました。 しばらくは、お散歩に行くのを嫌がって、朝、私が近づくと警戒する(笑)。外にいったん出たら、おしっこするまでは帰れません。おしっこをしたら、「おしっこ出たの、えらいね」と声を掛け、「帰ろうか」と言うと、一目散に家に向かうので、笑ってしまいます。 また、お散歩中、知らない音がすると、「どうしたらいい?」とでも言いたいような表情で、私の顔を見るようになりました。信頼関係が少しずつ構築できてきたかもしれません。