”怖がり保護犬”が動物行動学のプロの家に。3日間の玄関での籠城後に見せた劇的な変化
譲渡の時は毎回つらくて、大泣き
東京大学、および大学院で獣医学を学び、在学中にカリフォルニア大学デービス校付属動物病院にて行動治療学の研究をされた高倉はるか先生の連載の後編。 【写真】はるか先生と暮らすようになり、そこが安全で安心な場所だと知ったアロイは… 今回は、はるか先生が初めて「預かりさん」を体験した時のことをご紹介する。 動物行動学の専門家である高倉はるか先生の家に、3歳のアロイを連れてきたのは、一般社団法人動物支援団体「ワタシニデキルコト」、FRaU webの連載でもおなじみの、保護活動家の坂上知枝さんである。 ふたりは、本連載を通じて知り合い、はるか先生は時々「ワタデキ」のイベントを手伝うようになった。そうした中で、坂上さんの家に複数頭の保護犬猫がいることを知る。 保健所や動物愛護センターに保護された動物は、飼い主が迎えに来てくれるか、新しい里親が現れないと、一生を檻の中で終えることになる。自治体によっては、殺処分されることもある。令和4年度の殺処分数は、犬猫合わせて11,906頭だった。 坂上さんはじめ、多くの保護団体は活動家の方々は、身銭を切って病院で検査や治療を受けさせ、健康状態を把握し、適切な里親を探している。 里親探しには時間がかかるものだが、その間保護犬や猫を面倒見てくれるのが「預かりさん」である。 家族として迎え入れ、その後の一生をともにする「里親」と違い、「預かりさん」とは、保健所やセンターと、里親への譲渡のハブのような存在である。 だから、里親さんが現れれば、預かっていた犬や猫はすみやかに譲渡する。 預かりさんの家に空きがあれば、また保健所から次の子を引き出すことができる。新しい命を救うことになるのだ。 それでも、「里親さんのところで幸せになるとわかっていても、譲渡の時は毎回つらくて、家に帰ると大泣きしてしまう」と坂上さんはいう。 前編「動物行動学のプロが“極端な怖がり”保護犬の預かりさんに。初対面で『やらなかったこと』」では、はるか先生の家にやってきた3歳の保護犬「アロイ」についてお伝えした。 香川県の飼い主だった高齢女性が亡くなり、散歩の経験ほとんどなく、外の世界を知らなかったアロイは、10歳くらいの母犬とともに飼い主不在となった。 近所に暮らす方が、保護団体に連絡したうえで母犬は引き取ってくれたというが、残されたアロイの里親探しを地元の保護団体から委託されたワタデキ代表の坂上さんは、東京から香川にアロイを引き取りに行った。 はるか先生の家に連れてこられた初日のアロイは、怖くて玄関から家にあがることもできず、3日間玄関の隅に引きこもっていたという。 「こういう時は、無理に中には引き入れず、気が済むまで放っておいてあげたほうがいいと思います。家の中に何も怖いものがないとわかれば、自分から入ってきますから」と、はるか先生は言うが、その後どうなったのか。 先生の言葉でお伝えする。