韓国、次期大統領候補が掲げる不穏な「対日ポリシー」、尹大統領の弾劾決議案に記された気がかりな一文
進歩派はまた、弾劾決議が示すように、韓国を事実上の中国封じ込め戦略に引き込もうとするアメリカの試みにも批判的だ。トランプ大統領がこの方向を強く推し進め、防衛費分担の引き上げなど同盟への要求を出せば、抵抗にあうかもしれない。 もっとも、「アメリカとの同盟は韓国で非常に支持が高く、李氏や他の進歩的な人物が関係を損なおうとすることはないのではないか」とエンゲルス教授はみる。「李氏は米中競争においてより中立的な立場になるだろう。リベラル派といえども中国に近づくには限界があるし、韓国の世論も反対するだろう」。
トランプ大統領と新たな韓国政権の間で収束する可能性のある分野の1つは、北朝鮮の金正恩総書記と、北朝鮮との外交的関与を再開する試みかもしれない。文在寅政権は、金正恩総書記との交渉において、第1次トランプ政権のよきパートナーだった。もっとも、韓国側で政権交代があったとしても、北朝鮮側が関心を示すかどうかは定かではない。 「北朝鮮の現在の路線は、誰が政権に就こうが南は敵国だというものだ」と、北朝鮮の専門家で高麗大学講師のフョードル・テルチツキー氏は語る。
「(韓国の)前の左派政権は、北朝鮮に対して実質的なものを何も提供できなかった。だから、北朝鮮(というより金正恩個人)は韓国に対する希望を失ってしまったようだ。とはいえ、少なくとも左派政権であれば、対北朝鮮政策において攻撃的ではなく、ひょっとしたら屈従的でさえあるかもしれない」 実際、尹大統領は韓国で急激な反共主義への転向を主導してきた。戒厳令宣言の中で同大統領は、韓国政府を掌握しようとする親北朝鮮勢力に対抗するために行動していると主張した。
■日韓の協力も「台無しになる」可能性 このような見方は、尹大統領を自分たちの救世主とみなす超保守界隈でここ数年流布していた。しかし、共産主義者に矛先を向けようとする同大統領による試みは「裏目に出て、指導力を損なうだろう」と前述の元高官は言う。 今のところ、尹大統領は権力にしがみつこうとしているが、「最近、野党や与党内からも、彼と彼の妻に対する全面的な政治的攻撃があるため、メンタルは逼塞(ひっそく)状態にある」とこの元高官は語る。
自暴自棄な行為は悲しいことに、尹大統領の困難な任期中の最も重要な成果の1つである日本との関係回復と、両国間の真剣な協力の始まりを台無しにしてしまうかもしれない。
ダニエル・スナイダー :スタンフォード大学講師