「無人機どっさり空母」もう実現目前!? 「日本も早く」世界が熱視線を送るワケ
「シーガーディアン」の米メーカーも動きを活発化
バイラクタルTB3の発着艦試験の1週間前、2024年11月13日には、アメリカのジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)が開発したUAS「グレイイーグルSTOL」が、韓国海軍の強襲揚陸艦「独島」からの発艦試験に成功しています。 グレイイーグルSTOLはバイラクタルTB3と異なり着艦試験は行っていませんが、公開されている動画を見る限り、ヘリコプターの発着艦を想定して開発された「独島」の飛行甲板から、難なく発艦できたように見受けられました。 GA-ASIは2023年11月にも、イギリス海軍の空母「クイーンエリザベス」を使用して、同社の技術実証用UAS「モハベ」の発着艦試験を行うなど、固定翼機型UASを空母や強襲揚陸艦で運用する可能性を模索しています。 さらに同社は世界各国海軍のニーズを踏まえた上で、固定翼機型UASのMQ-9Bを空母や強襲揚陸艦で運用するためのSTOLアップグレードキットも提案しています。MQ-9Bは、海上保安庁が運用し、2024年11月には海上自衛隊も導入を決めた「シーガーディアン」のことです。 GA-ASIはMQ-9BのSTOLアップグレードキットについて、カタパルトや航空機の着艦に使用するアレスティングギアを持たない、全通甲板を備えた大型の軍艦を保有する「その他の海軍」でも導入が検討されていると述べています。 実は「その他の海軍」の中には、海上自衛隊も含まれていると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は聞き及んでいます。
「日本も早く艦載戦闘用無人機を」
現在、海上自衛隊のいずも型ヘリコプター搭載護衛艦は、必要に応じて航空自衛隊のF-35Bを搭載する計画で、そのための改修や試験も進められています。その一方、大きな飛行甲板を持ちながら、現状運用できる航空機がヘリコプターのみとなっているひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦については、UASを搭載してさらに有効活用できないかという考えが存在していました。 STOLアップグレードキットを装着したMQ-9Bがひゅうが型で発着艦できるのかは未知数ですが、もし可能であるならば、ひゅうが型の活用範囲は大きく拡大するはずです。 またMQ-9B用の主翼から吊り下げて使用する想定で、電子戦ポッドや、潜水艦との高速通信を可能とするレーザー通信ポッドなどの追加装備も開発されています。もしSTOLアップグレードキットとこれらの追加装備を導入してMQ-9Bに搭載し、いずも型やひゅうが型の艦載機として運用するならば、海上自衛隊の能力はさらなる向上が見込めると考えられます。 前に述べたバイカル・テクノロジーでゼネラル・マネージャーを務めるハルク・バイラクタル氏は2022年3月8日付のNIKKEI ASIAに掲載されたインタビュー記事の中で、「日本も早く艦載戦闘用UASを導入すべきで、バイラクタルTB3はいずも型ヘリコプター搭載護衛艦にフィットする」と述べており、日本へのバイラクタルTB3のセールスに関心を示しています。 固定翼機型UASの運用プラットフォームとしてのいずも型とひゅうが型は、国内だけでなく、このように海外からも注目を集めています。近い将来、海上自衛隊も固定翼機型UASを運用する「無人機空母」を運用する海軍の一つになっているのかもしれません。
竹内 修(軍事ジャーナリスト)